「三つの願いごとは何にする?」


男は微笑んだ。ふらふらと何かに導かれるように着いた先は大きな建物。これは誘拐? 逃げなくちゃ。そう頭が判断しても私は逃げることが出来なかった。






知らない世界






「わかった、君は『テニスの王子様』が好きなんだね。」
「君にはこれから二次元の世界に行って貰いたい。もちろん、オプションはつけるよ。住む場所やその他の生活に必要なものはこちらで用意するから、それ以外で三つお願いを言って」


これは夢だ。夢。


「お金。銀行の口座に私がどんなに使用してもいつも最低億単位のお金は容易しておいて欲しいです」
「冷静だね、あとは?」
「帰りは好きな時で?」
「ああ、構わないかれど、向こうの時間軸で一年は居て欲しいな。それを過ぎたらいつでもどうぞ」
「じゃあ、一つは保留で」
「わかった。じゃあ……最後は?」
「空を、飛べるようにして下さい」「……」
「……あのー」
「ふふふいいよ。おもしろいね、それ。翼はつける?」
「いらないです」
「おーけー」


 それから男に導かれるままにカプセルの中に入った。そしてそのまま眠りに落ちる。
暗い暗い海の底のような場所を沈んでいくと、光が見えてきて、私はその中へ吸い込まれていった。



 目を覚ますと、そこは女の子の部屋。そこは私の知らない部屋なのに、記憶が私の部屋だと言っていた。きっとあの男に植え付けられた記憶。なんだか気持ち悪い。
 私はベットから起き上がってカーテンを開けた。窓の外に広がるのは都会の町並み。私の世界と全く違わない風景。でも私が住んでいたのはもっと田舎だった。
 この後にしなければならないことが自然と頭に浮かんでくる。今日は新しい学校の始業式だから、クローゼットの中にある制服を着て、早めに家を出ないと。学校の名前は氷帝学園。