事実
結局雅治との最初のデートは雅治が暑いのが苦手だから水族館になった。
「昨日、仁王とデートだったのか?」
「何でそれを!?」
相変わらず蓮二は何でも知っている。
「それ」
蓮二はあたしの携帯を指差す。
そこには雅治とお揃いのイルカのストラップ。
「仁王もつけていたらしいから」
「一緒に買ったんだ」
あたしはイルカをいじりながら言う。
別にお揃いのストラップをつけてるから何かあるわけじゃないけど。
ただあたしはまだ幸村への思いを完全には振り切れてない。
だから流れそうになったらこれを見る。
あたしには雅治がいるんだって思えるから。
「仲は…良いようだな」
蓮二は微笑みを浮かべて言ってくる。
実際仲はいいと思う。
どんなに忙しくても必ず2人の時間があるし。
「まぁね♪」
正直笑って言えると思わなかった。
幸村への思いを段々無くしていけてる証拠かな。
「ていうか、らしいって何?誰かに聞いたの?」
「あぁ、なまえにな。仁王らしくないものをつけていたと言うから」
そういうことか。
あんまりなまえには知られたくなかったな。
幸村の彼女だし。
「“知られたくなかった…”」
「!」
「いいじゃないか、知られても。お前には仁王がいる」
蓮二は絶対、あたしが幸村のことを気にしているのをわかって言ってる。
「そうだよ。やっと忘れらて来たの。雅治が一緒にいてくれるから」
その言葉を聞いて蓮二は一瞬、戸惑いを浮かべたように思えた。
「そうか、なら良かったじゃないか」
多分そう思ってないんだろうな。
彼は何かひっかかっている気がする。
何かはわからないけど。
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