夜、雅治と柳生の部屋を訪ねる。


出てきたのは柳生だった。


「あ、柳生。雅治いる?」

「えぇ、いますよ。入ってください。私は席を外しますから。」


柳生はそう言って部屋を出ていった。


部屋に入ると雅治はベッドに寝転がっていた。


「雅治…」


あたしが名前を呼ぶとだるそうに少し頭をあげて振り返る。


「名前?何かあったんか?」

「ん…」


雅治がいるベッドに座る。


雅治にはあたしの顔が見えないように背を向ける。


「ごめんね、疲れてるのに」

「別にええ。何があったんじゃ?」


よく考えたら言えない。


気持ちの蓋が外れそうなんて。


「ううん。雅治に会いたくなったの」

「…」


ベッドが軋む音がして後ろから雅治に抱きしめられた。


「名前」

「うん?」

「好いとうよ」

「…うん」


わかってる。

雅治が本気であたしを好いてくれてることは。


だから逆に後ろめたいんだ。


あたしの中はまだ雅治一色じゃないから。












「疲れてるのにごめんね。おやすみなさい」


少ししてから雅治の部屋を出る。


あまり長居しても柳生に悪いし。


「名前!」


自分の部屋に帰る途中名前を呼ばれた。


振り返るとそこには今一番会いたくない人物、幸村がいた。


「探した。携帯繋がらないし」


言われて携帯をみると何回か電話がきていた。


「ごめん。なまえには言ったはずなんだけど」

「そうなのかい?何も言ってなかったよ」

「そっか。ごめん。で、何か用?」


用がないなら早く別れたい。


今は幸村と話してると辛い。


「ちょっと話があるんだ」


彼はそう言って歩き出す。


あたしもそれに続くと外に出た。