「来週から合宿がある」


そう言われたのは夏休み入ってすぐだった。


部長はプリントをみんなに配って軽い説明をしていた。


「来週からってホント急だよね」


帰り道に雅治と合宿について話す。


「そうじゃな。行きたくなか…」

「暑いのが嫌だから?」


多分そうだよね。


本当にテニスしてる時以外はいっつも涼しいとこ探してるし。


「それもじゃけど違う」

「あれ?違うんだ」


一番の理由はそれだと思ったのにな。


「じゃ何で?」

「…」


雅治は何も言わずに繋いでいる手に力をこめる。


「名前と2人になれんから」

「でも逆に考えたらずっと一緒にいれる」


あたしが雅治を見上げて言うと「それもそうじゃな」って言って雅治は笑う。


雅治とずっと一緒にいれるのは嬉しいけどやっぱり不安だ。


一緒にいれるのは雅治だけじゃない。


テニス部のみんなもだから勿論幸村もいる。


「今、おまんが何を考えとるか当てられるぜよ」


雅治は鋭い。


多分雅治が考えてることは当たってる。


「完全に幸村への思いをオフにはできんことはわかっとる。だから俺はおまんが俺を好きになってくれるまで待つと言ったんじゃ」


やっぱり。


最近は幸村と話しても辛い気持ちにならなくなった。


それも全部雅治のおかげ。


それにあたしは今、雅治を好きになってきてる…と思う。


「雅治、好きだよ。雅治が待ってくれてるのはわかってるから嘘は言わない」

「そーか」


雅治はあたしの頭を撫でて微笑んだ。


相変わらず大好きな雅治の温かな手。


「合宿頑張ろうね!!」

「ん」