R.Yanagi side
本当にそれで良かったのだろうか。
名前は着実に精市への気持ちに蓋をして。
仁王を想い始めている。
俺は精市が名前を好きなことを知っている。
それに名前は勘違いをしている。
精市となまえは付き合っていない。
それでも名前にそのことは言わなかった。
否
言えなかった。
精市には何も言うなと言われていた。
2人は両想いだったのに。
気持ちの問題だから理屈ではないことはわかっているが。
2人には幸せになって欲しかった。
「精市、お前は本当にこれでいいのか?」
「あぁ。彼女は仁王といた方が幸せだ」
あいつがどれだけ辛い思いをしてお前への気持ちに蓋をしたというか。
「俺はあの子の隣にいる資格はない」
資格云々の話ではないだろう。
だが精市にそう言ってもきっと無駄だ。
「俺は彼女を傷つけてばかりだ。俺がいてもまた泣かせてしまうだけ」
「…」
「名前は仁王といた方がいいんだ」
精市の目には迷いはなかった。
しかしお前がそう思っていても名前はどうだろうな。
確かに仁王といても不幸ではないだろう。
あいつはあいつなりに彼女を大切にしてる。
だが、やはり今のままが最善だとは思えない。
「もっと自分の気持ちに素直になってもいいんじゃないか?」
「この前も言われたよ」
精市は俺を見て苦笑した。
おそらくなまえにだ。
「できることならそうしたいんだけどね…」
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