やっとユキムラと再開したのは1年と少したって中学に入学してから。


中学受験をして私立に入った所為で友達が1人もいなくて静かに自分の席に着いていた。


廊下ではざわざわと声がする。


周りの人は皆知り合いがいるみたいだ。


あたしだけ1人…


そう思うのは被害妄想ではない。


本当に誰も声を掛けてくれたりはしない。


あたしは暇だから黒板の座席表を眺める。


読めない名前がないかチェックする。


たいして難しい名前の奴はいない。


そう思って見ていたあたしの目にとまった1人の名前。


“幸村”


そう書いてある。


コウムラ?コウソン?まさかシアワセムラ?


いや、それはありえないでしょ。


後で聞いて見なきゃ。


シアワセムラだったら笑い堪えきれないかも。


あたしはそんなことを考えて机に突っ伏した。


廊下でざわざわしていた奴らが教室に入ってくる。


これからあたしの新しいクラスメイトとなる生徒たち。


友達できるかな。


そんな不安を持つのも中等部の1年生のときだけ。


後はずっとエスカレーターだからそんな気持ちを持つことも殆どない。


トントンと急に背中を叩かれる。


驚いて後ろを振り向くと栗色のふわふわボブで眼がパッチリの可愛らしい女の子。


「名字さん?だよね。おはよー」


彼女は黒板の座席表を見てあたしの名前を確認する。


「あーおはよう。えーと…?」


可愛らしいその子はクスッと笑って自己紹介をする。


「私はみょうじなまえ。なまえって呼んで」


にっこり笑う。


「あ、うん。あたしは名字名前。名前でいいよ」


これが今の親友で良き仲間のなまえとの出会いだった。