何故名前は俺の所に来たんだ。


「いいの。あっちは応援沢山いるから」


そう言ってニッコリ笑った。


「ありがとう」


誰も来ないで孤独に手術を受けるものだと思っていたから心底嬉しかった。


でも同時に今、テニスのことを思い出したくはなかった。


手術を受けてもテニスができるまでには辛いリハビリもあるし、


何より本当にテニスができるまで回復する保証はなかった。


「手術頑張ってね。きっとみんなもあっちで応援してる」

「うん」


返事はしたものの違和感が残る。


手術を頑張れって頑張るのは俺じゃない。


医者だ。


応援なんかされたってどうしようもない。


「みんなの応援に行きなよ。俺は大丈夫だから」


俺はできるだけ苛立ちを悟られないように言う。


「ううん。幸村の手術が終わるまでいる」

「そう…」


正直いないで欲しい。


今は何も考えたくない。


テニスのことも何もかも…。


それに名前がいても何かが変わるわけじゃない。


「ねぇ、幸村…」


沈黙の中彼女は切り出す。


「病気にかかったのが幸村じゃなければよかったのにね」


途方もない話。


そんな幻想を抱いてもしょうがない。


実際俺は病気をして今まさに手術をしようとしているのだから。


「そしたらみんなと関東も闘えたし」


もうこれ以上どうしようもないことは言わないで。