部室のドアが突然開いた。


振り返るとそこには柳生が立っていた。


「仁王君、貴方の所為で私が真田君に怒られてしまったじゃありませんか」

「…すまん」

「何があったんですか?」

「…」

「話してください。私が信用なりませんか?」

「……」

「仁王君」


柳生が近づいてくる。


「名前さん、泣いてましたよ」


やっぱり泣いとったか。


「もう一度聞きます。何があったんですか」


柳生は眼鏡を押し上げて俺を見据える。


「…八つ当たりした」

「名前さんにですか!?」


柳生は驚いたように俺を見る。


そりゃそうじゃよな。


柳生は俺が名前を好きなことを知っている。


だからきっと余計に驚いている。


「八つ当たりなんて貴方らしくないですね」


そんなん俺が一番思ってる。


まさか自分がそんなに簡単に我を忘れるとは思わなかったぜよ。


「詐欺師とまで言われている貴方が何故?」

「幸村…」

「あぁ」


柳生はこれだけで通じる最初から説明しなくて済むのは有り難い。


説明なんかしてたらまたイラついてしまう。


「そんなに言うなら名前さんに気持ちを伝えてみたらいかがですか?」

「無理じゃ。あいつの中には幸村しかおらんぜよ」


誰が見たって名前は幸村のことが好きなのは明々白々。


でもやっぱり自分で口にすると傷つく。


「しかし…」


あぁ、俺は何やってんじゃ。


「柳生」

「はい?」

「俺、名前に謝る」


それで元の関係に戻ればいいんじゃ。


いつも通り部活やって、みんなで飯食って、一緒に帰れればそれでいい。


名前には謝ろう。


でも幸村には絶対謝らんぜよ。


俺は名前を諦められん。


ただ今は元の関係に戻す。


名前の気持ちが変わればまだ俺にもチャンスはある。


じゃから諦めん。



―――M.Nior said END