雅治の手は昔から安心する。


おっきくて、あったかくて。


だからこうされるとつい頼ってしまう。


「皆はテニスがあって無条件に仲良くできるんだもん。なまえは幼馴染だし。でも、あたしはテニスもやったことないし皆より知り合ったのも遅いから」


あたしは話しながら俯いていく。


あぁ…ヤバイ。


泣きそう。


「名前だって皆と同じ仲間じゃろ?」

「でも「でもじゃなか」


あたしの言い訳をさえぎって話を続ける雅治。


「同じ仲間に出会った時間なんて関係ないじゃろ。幸村はおまんのこともちゃんと仲間だと思うとる」


そう言ってあたし頭をくしゃくしゃ撫でる。


「ゴメン…」

「何で急にそんなことを?」


確かに今までこんなことを口にしたことはなかった。


でも心の中でうすうす思ってはいたんだ。


なんとなく幸村と距離があるような感覚が消えない。


皆からしたら普通に見えるのかもしれないけど。


「嫉妬…」


きっとなまえや皆に嫉妬してるからそんなこと思うんだ。


無条件に一緒にいれるなまえや、テニスを通じて仲間だと思える皆に対して。


「ほんに名前は幸村が大好きじゃな」


雅治が何故だか一瞬哀しそうに笑ったように見えた。


「ち!!違うよ!!」


そういいながらも顔が赤くなるのを感じる。


「ただあたしだけ仲間に入れてないのかな〜なんて思っただけで…」


あたしが焦っていると雅治はククッと笑った。


「悩んでるよりも笑ってるほうがええぜよ」

「からかうなっ」


そういってあたしは雅治から顔を背ける。


本当は雅治がいてよかったって思ってる。


あたしが落ち込んでるとき、隣にいてくれて。


あたしを元気にしてくれる。


何でも悩みを相談してるなまえにだって幸村のことは話せない。


だからこの気持ちを知っている蓮二や雅治に頼ってしまう。


「じゃ、また明日」

「ピヨ」


雅治はいつも家まで送ってくれる。


こういうとこ優しいんだよね。


あたしは雅治と別れて家に入る。


「幸村か…強敵じゃな…」


彼がそう呟いてることも知らずに。