あたしは皆より幸村と知り合ったのが遅い。


だから彼に近づくのは必然的に遅れた。


でもなまえは違う。


あの子は小さい頃からずっと幸村の傍にいて。


幸村を見て、話してきた。


だからあたしとは逆に一番近い存在かもしれない。


あたしがもしなまえと同じ立場だったらもしかしたら両想いになれていたかもしれない。


幼馴染を好きになるのはなんとなくわかる気がするし。


あたしもできることなら幸村と幼馴染でいたかった。


今更そんなこと言ったってしょうがない。


って頭ではわかってるんだけど。


皆だってテニスを通じて幸村とは早くから知り合ってるし。


時々思っちゃうんだよね。


なまえや皆ずるいって。


あたしだって幸村やテニスをもっと昔から知ってたらもっと早く仲良くなれてたのにって。


昔の自分に教えてやりたいよ。


名前、今のままじゃ損するよ。って。


「では、私達はここで。名前さん、お気をつけて」


駅前で皆と別れる。


唯一同じ方向の雅治を除いて。


「ねぇ、雅治…」

「なんじゃ?」

「あたしって損してるかな?」


唐突な質問に雅治は顔をしかめる。


「わけわからんナリ」

「あーごめん。なんでもない」


そうだよね。


急にそんなこと言われてもわかんないよね。


「幸村…か?」


その名前を聞くと無意識に体が反応してしまう。


「やっぱりのぅ」


雅治はあたしの顔をチラッと見て苦笑する。


「損って?」

「…」

「話しんしゃい」


雅治があたしの頭に手を置く。