なまえは幸村の幼馴染でずるいってたまに思う。
幼馴染だから近くにいられて。
幼馴染だから名前で呼べて。
幼馴染だから今日もこうやって幸村と一緒に部活を休む。
幸村も幼馴染だからなまえを特別扱いする。
そんな関係を羨んでるあたしがいる。
幸村を好きだから。
でもそんな感情を表に出してはいけない。
雅治や蓮二には別にいいじゃないかといわれるけど。
でもだめだ。
幸村となまえは明らかに両思いだ。
鈍感なあたしにだってそれくらいはわかる。
あの2人の目を見てれば。
だからそういう2人の間にわざわざ入っていくような野暮なことはしない。
「また自分を押し込めているのか?」
あたしの隣にいつのまにかブン太と交代した蓮二が座る。
「精市となまえがいない日はいつもそういう顔をしている」
「そういう顔ってどんな顔よ」
悲しい顔?
辛い顔?
寂しい顔?
何かどれも違う気がする。
「思いつめた顔」
蓮二に一言で言われて呆然とする。
思いつめた顔ってあたしが何を思いつめてるっていうの?
「俺たちも俺たちなりにお前を心配している。だからそんな顔をするな」
蓮二がぺちっとあたしの頬を軽く叩く。
「あんまりそんな顔をしてると弦一郎に活を入れられるぞ」
蓮二は小さく笑ってコート上の弦一郎を見た。
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