雅治…?


あんたは何を言うつもりなの?


「名前はゆき「はい、雅治くん、ジャッカルと交代ねー」


あたしは無理やり雅治をコートの方に押しやった。


そしてジャッカルに交代の合図をかけてまたもとのベンチに戻る。


雅治は鋭すぎて困る。


あたしの幸村に対する気持ちに逸早く気づいたのもこいつだ。


今では蓮二にもバレてるけど。


「なんか俺、交代早くねぇか?」


ジャッカルはコートから出てきてあたしを見る。


確かに順番で言うと次は蓮二が交代する番だった。


でも今あいつがきたら雅治をコートに入れた意味がなくなる。


だからジャッカルを交代した。


「ん?気のせいだよ、ジャッカル」

「そうか?」


不憫なジャッカル。


知らぬが仏とはよく言ったもんだ。


「なー仁王はなんて言おうとしたんだよ」


ベンチに座ってガムを膨らましながらブン太は尋ねてくる。


教えるわけがない。


「えー?知らない。何だろうねー」

「てめ、絶っ対知ってんだろぃ」


あーもー…


しつこい男は嫌われるよ、ブン太


だから少し黙ってろ。


「いい加減にしなさい?」


あたしはにっこりと笑って、鬱陶しいという意味を込めてブン太を見た。