隣にいるために



辛い時、名前はいつも隣にいてくれた。



俺は名前が好きやった。



「蔵?何かあった?」



いつも最初に気づくのは名前なんや。



他の奴が気づかなくても名前だけは気づいてくれる。



「何もあらへんよ」



でもそれが俺にとっては辛い。



名前が見てるのは俺やない。



それはずっと前から知っとった。



俺は彼女には手が届かない。



だから自分の気持ちに言い聞かせた。



諦めよう、諦めよう、って。



「でも元気ないよ」



心配そうに見てくる彼女が愛しい。



俺だけを心配して欲しい。



俺だけを見て欲しい。



俺の中には独占欲丸出しの俺と、それを押さえつける俺がいる。



「そないなことないって」



笑って答える。



俺はちゃんと笑えてるんやろうか。



わかってるんだ、名前が俺に振り向くはずがないことは。



わかっていながら諦められへん。



大好きだから。



好きで好きでどうしようもないから。



好きになってしまったら何をしたって無駄なんや。



「そう?何かあったら言ってね。話くらい聞くからさ」



可愛らしい笑顔で言う。



嗚呼…



俺が名前の想い人なら良かったのに



この笑顔を俺のもんにしたい。



でもこの気持ちはしまうんだ。



彼女を傷つけないために。



彼女のそばにいるために。



そして、俺自身のために。



そばにいて、とは言えない。



「おおきに。そうさせてもらうわ」



でも俺が名前のことを好きなことはきっと話すことはない。



だって愛しい君は他の奴を愛しているから。



END...


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