やっぱりヘタレ



あたし何であないな奴好きになったんやろう。



確かに黙ってればイケメンなんやけど。



でもヘタレやし、アホやし、後輩にすらなめられてる。



何であたしはあいつを好きになったんや



「名字ー」



謙也があたしの名前を呼びながら走りよってくる。



それだけであたしの心臓はバクバク。



おかしい。



どう考えてもおかしい。



相手が白石ならわかる。



完璧で頭よくて優しい。



でもあたしが好きなんは白石やなくて謙也。



「財前、見ぃへんかった?」



なんや、あたしに用があるわけと違うんか。


「見とらんよ。どないしたん?」

「んー。白石に探してくるよう言われてん」



同学にまでパシられてんのか。



けどきっと謙也のことやから快く引き受けたんやろう。



スピードスターが探してきたる、とか言うて。



「あ、」



財前君、発見。



「ん?」



彼は2階の教室の窓側で気持ちよさそうに寝ている。



「あいつ、あないなとこに…」

「見つかって良かったね」

「おん。」



財前君が見つかったのに謙也は動こうとしない。



「早よ行かな」

「せやな」



返事しといてなんで動かへんねや。



早よ行けや。



「今部活中なんやろ?早く連れ戻してこなあかんのやないの?」

「せやで」



さっきからこの男なんやねん。



言うてることとやってることが全く逆やない。



「名字」

「ん?」

「俺がホンマに財前を探しにきたと思うとるん?」

「はい?」



どういうことなんや。



ほんまは違うって言うん。



せやったらなんで部活中に来ないなとこにおるんやろう。



「そんなわけないやろ」



謙也はあたしに近づく。



あかん、これ以上近づかれたら平然としてられへん。



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