素直じゃない君
図書室で時々会って、話しかけるようになった後輩、日吉君。
彼は会うといつも奇妙な本を読んでいる。
「日本奇怪百選…」
私の呟きを聞いて本から目を離す。
眼鏡の奥から鋭い視線がとんでくる。
「何か用なんですか?」
口調はいかにも邪魔だと言いたげだ。
話しかけて快く受け入れて会話をしてくれたことはただの一度もない。
そんなに私は邪魔なのかそれとも単に本に集中したいのか。
「いや、特に用はないけど」
「そうですか」
また本に視線を戻す。
その本を脇から覗いて見ると不思議な挿し絵がある。
本当に面白いのかな。
とてもそうは見えない。
「まだ何か?」
じっと見ていた私を気にしてか、見上げて不機嫌そうに言う。
「あ、ごめん。邪魔だよね」
苦笑してみると日吉君は私を一瞥して溜め息をついて本を閉じる結局いつもこうやって話し相手になってくれる。
きっと彼は本当は優しい人なんだと思う。
「もういいです。構って欲しがってるのは知ってるんでね」
生意気に言ってるけど事実ではある。
「日吉君って部活とか入ってるの?」
日吉君の隣の椅子に座りながら聞いてみる。
元気に走り回ってる姿は想像できない。
ともすると文化部か帰宅部か。
「それ本気で聞いてるんですか?」
日吉君の眉間には皺がよっている。
そして訝しげな目で私を見る。
何かまずいこと言ったのかな。
「俺、中学からずっとテニス部ですけど」
「テニス部!?」
テニス部と言えばうちの学校は中高共に全国大会常連校。
相当強くないとレギュラーにはなれない。
現在レギュラーに後輩は3人いる。
それくらいはテニス部と全く無縁な私でも知っている。
それだけテニス部は生徒に人気で特別な部活。
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