多分、今名前は泣いている。



「俺の顔、見たらいかんぜよ」



きっと今、嘗てないほど情けない顔をしてる。



詐欺師とは思えない俺の素顔。



名前は言うとおり顔を上げない。



「俺はおまんにだけ時間をさくわけにはいかん。それでも我慢できるか?」



名前は頷く。



そして、ごめんと謝る。



「何で謝るんじゃ」



笑って問う。



俺が謝る必要はあっても、名前が謝る必要はない。



「幼なじみだから、付き合ってくれるんでしょう…。本当は私のことなんて何とも思ってな…」

「名前」



名前の言葉を遮って名前を呼ぶ。



それに反応して俺を見上げた瞬間に唇を重ねた。



名前の体を支えるようにして何度もキスをする。



「好きでもない奴に俺がキスなんかすると思うんか?」



唇を話して名前を見つめる。



いくら詐欺師だってそんなことはせん。



「でも、まさ…、私に、冷たい、じゃん」



涙を流しながら小さな声で言う。



きっとずっと気にしていたんだろう。



「それは、名前が、どんどん可愛くなっていくからどうしたらいいかわからんくて…」



無意識のうちに次第に声が小さくなる。



あぁ、名前といると調子狂う。



いつもの俺でいられない。



こんなこと普段なら絶対に言わんのに。



「ほんと?詐欺じゃない?」



答える代わりに何も言わずに微笑む。



すると名前は俺に抱きついてきた。



「まさが、格好良くなるから、おいていかれたくなかったの」



俺を見上げて名前も笑う。



「格好良くなっていくまさの隣いたかった。私、まさの隣にいていいんだよね?」



もう一度優しくキスを落とす。



「勿論じゃ。俺の隣はお前さんしかおらんぜよ」



名前は嬉しそうに笑った。



俺たちはどちらからともなく手を繋いで家に帰った。



END...



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