いつかは名前にも彼氏ができるだろうことくらいわかってる。
その時に、ちゃんと俺は名前に向き合えているんじゃろうか。
「私、好きな人いるんだもん」
名前が止まる。
それに合わせて俺も止まる。
「早く帰るぜよ」
歩くのを促す。
好きな奴なんて聞きたくない。
俺は背を向けて歩きだす。
「待って!!」
ブレザーの裾を引っ張られる。
「なんじゃ」
イラつき気味に振り返る。
俺を真剣に見る名前。
身長差的に自然と名前は上目遣いになっている。
あー…、理性吹っ飛ぶ…。
勘弁してくれ。
「あの…えっと…」
しどろもどろしてなかなか言い出さない。
「まさは…いないの…?」
やっと出てきた言葉は白い息に混ざっていた。
「プリッ」
わざと適当にはぐらかす。
名前が好きだなんて言えんかった。
今まで散々距離をおいといて今更言えない。
「まさは、高校入ってから冷たくなったよね…」
俯いて悲しそうに呟く。
違う。
今まで通り接することができなくなっただけじゃ。
「私、寂しかったよ…。まさが…大好きだから…」
俺を見上げた目には涙が溜まっていた。
今にも泣きそうな顔だった。
「仕方ないのぅ」
決まりの悪い顔をして頭をかく。
そして名前を引き寄せて抱きしめる。
小さくてすっぽり俺の腕の中に入る。
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