「別に、何もしてないよ」
笑ってはいるが目が泳いでいる。
「名前は嘘が下手じゃのぅ」
名前の頭をくしゃくしゃとなでて笑う。
柔らかく細い名前の髪が俺の指に絡まる。
名前は少し顔を赤らめたように見えた。
昔はよくこうやって頭をなでてた。
でも最近ではめったにやらなくなった。
名前に安易に触れてはいけない気がするんじゃ。
「何か…久しぶりだね…」
名前が下を向いて呟く。
「こうやって二人で話すの」
「…そうじゃな」
俺はポケットに手を突っ込んで前を向く。
名前の顔が見れない。
俺が意図的に避けてるから久しぶりに感じるんじゃろう。
「まさ…」
沈黙のまま俺の家に向かって歩いていたら呼ばれた。
「なんじゃ」
どうしても素っ気なくなってしまう。
優しくできない。
近づきたくても近づいたらいけない。
「聞かないの?何してたか」
「話したくないんじゃろ。だったらもう聞かん」
名前の歩調に合わせてゆっくり歩く。
お互いに無言のまま長い時間が経ったように思えた。
実際は本当に短い時間のはずだ。
俺の家まではそう遠くはない。
「あのね、まさのクラスの人に呼び出されてたの」
「ほぅ」
また告白されてたんじゃな。
「まさと付き合ってないなら自分と付き合って欲しいって」
「そーか」
勿論俺と名前は付き合っとらん。
ただの幼なじみ。
しかも最近では疎遠になりつつある。
だから名前が誰と付き合ったって俺は何も言えない。
どんなに名前が好きでも言える立場じゃない。
「…断ったよ」
どこかでほっとする自分がいた。
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