好きだなんて言えん。
「それでも仁王君は名前さんのことが好きなんでしよう?」
「あー…まぁ…」
顔をしかめて曖昧に答える。
はっきりと口にしたら気持ちが溢れてしまいそうな気がする。
そんなのはいかん。
俺は詐欺師で、立海テニス部のレギュラーで、全国制覇をしなきゃならない。
名前だけのためには時間はかけられない。
例えば付き合えたとしたって、寂しい思いをさせるだけだ。
俺は一匹狼でいい。
「仁王、たるんどる!!」
いつも通りの初めの基礎メニューでミスを連発して、真田に怒られた。
「すまん…」
何かがおかしい。
今頃、名前は一人で俺ん家に向かってんのかとか、
また告白でもされてるんじゃないかとか、
考えれば考えるほどイライラが募る
その結果一向にミスは減らない。
そしてまた真田の叱咤を受ける。
その繰り返しのまま今日の練習が終わった。
急いで着替えて他の部員より先に部室を出る。
早く帰って名前に会いたかった。
わかってるんじゃ。
自分がどれほど名前を好きなのかなんて。
それでも抑えなきゃならない。
校門を出たら前によく知った人影があった。
なんでこんな時間に?
日の入りの早い冬だからもう辺りは暗い。
こんな暗闇の中で女が一人で帰るのは危険だ。
「名前」
「まさ!?」
振り返ってすごく驚く。
そして腕時計を確認して頷く。
「もう部活終わる時間かー」
笑ってマフラーを巻き直して後れ毛をいじった。
名前が髪をいじるのは何かを隠している時なのを俺は知っとる。
「今まで何してたんじゃ」
俺が部活に行ってから少なくとも2時間は経っている。
先に帰るよう言ってあるからまさか俺を待ってたなんてことはないじゃろう。
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