隣に立つ
幼なじみへの態度が変わったのは高校に入った時だった。
名前は高校に上がった頃からすごく可愛くなったと思う。
実際、中学ではあまり目立つ方ではなかったんじゃが、最近ではよく告白されている姿を目にするようになった。
きっとそれは誰にでも平等に接する性格が周りに好かれるからだろう。
「まさ、今日ご飯食べに行くね」
親同士が仲がいいから時々親がいないと夕飯を食べに来る。
「勝手にきんしゃい」
俺は名前を見ずに答える。
本当はちゃんと答えたい。
でも何だか照れるんじゃ。
可愛くなったせいでどう扱っていいのかわからん。
それだけじゃないけど。
「えーと、だから…一緒に帰ろ?」
「俺は今から部活じゃき、先に俺ん家行きんしゃい」
一瞬暗い顔をされたが俺には何もできない。
「そっか。じゃあ先に帰ってるね」
無理矢理明るい声で笑顔で言っているのがわかる。
俺は名前にこんな顔ばかりさせてる気がする。
「おぉ」
何も気の利いたことは言ってやれんかった。
何も言わずにそのままラケットバッグを持って部活へ行く。
途中で柳生と会ってさっきのことを話す。
「紳士たるもの女性にそんな態度をとってはいけませんね」
「俺は紳士じゃないぜよ。詐欺師じゃ」
立海の詐欺師、それが俺の異名。
詐欺師の俺は好きな女だって詐欺にかける。
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