サボり
今、私が一番困ってるのは好きな人の冗談を受け流すこと。
だってそれが冗談だってわかってるのに本当だったらいいのにって思ってるんだもん。
「仁王君、また授業をサボったそうじゃありませんか」
「似とらんナリ」
柳生君の真似をしてもそうやってバッサリ言い放つのは1歳年下で部活の後輩の仁王雅治。
授業をよく屋上でサボってるまさを叱るのは私の仕事となっている。
幸村君や真田君でさえもまさのサボり癖にはお手上げの状態だった。
ここは先輩として私が指導しなきゃと思って毎日のようにサボっているまさを呼びに行く。
「そんなことはどうでもいいの。ちゃんと授業に出なさい」
実はこうやって世話を焼くのは嫌じゃない。
部活外でまさとかかわれるから。
年下だけど私はまさのことが好きだから。
「名前ちゃんがキスしてくれたら出ちゃる」
いつもそう。
できないとわかっててそういう冗談を言うんだ。
「またそんな冗談言って。部長に言ってレギュラーから外してもらっちゃうよ?」
いつもこうやって脅しをかけて無理やり教室に帰らせる。
教もこの言葉で帰ると思った。
けどまさは私の予想に反してフェンスに寄り掛かったまま動こうとしない。
「割と本気なんじゃけど」
にっこり笑って私の手を取る。
まさの綺麗な顔が近づいてくる。
キスされる…
そう思って目をギュッと閉じると頬を指で挟まれた。
「くくっ」
楽しそうに笑うまさを見て恥ずかしさがこみ上げる。
私、期待してたみたいじゃん。
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