仁王が女の子に呼び出されているのを知ってあとを付けた。
「よかったの。俺があの女と付き合わんくて」
「別に」
あたしは仁王を睨む。
内心は仁王があの子と付き合わなくてほっとしてる。
「じゃあ、今から追いかけるか」
仁王は向きをかえてさっきの彼女を追いかけようとする。
「あ…」
自然と声が出る。
それと同時に仁王の動きが止まる。
「あ?何かあるんか?」
今言わなくちゃ。もうチャンスはないかもしれない。
例え彼に今付き合う気がなくても。
「何も…ない」
考えてることと逆の言葉が口から出る。
だってやっぱり言えないよ。
フられるのが怖い。
「そうか」
もう一度仁王が動き出す。
嫌だ。行かないで。
あたしはあんたが好きなの。
そう素直に言えたらどんなに楽か。
仁王の背中が遠ざかっていく。
それを見て考えるより先に体が動いた。
仁王に後ろから抱きつく。
「なんじゃ?」
仁王が振り返る。
「仁王の…ばか」
もっと強く抱きつく。
あたしの気持ち、分かってるくせに。
勘のいい仁王なら。
「…くくっ」
「え?」
仁王はあたしの腕を解いて向き合う。
「あんまりにもお前さんが必死だからついいじめたくなった」
笑いが止まらないのか珍しく可笑しそうに笑っている。
「どういこと…」
「必死なお前さんが可愛くて、つい、な」
え…?可愛い?
顔が一気に赤くなる。
仁王が無言であたしを引き寄せる。
「…好いとうよ。意地悪してすまんの」
「本当なの?」
信じられない。仁王があたしに告白を…?
「本当じゃ。付き合うてくれ」
「…はい」
あたしは嬉しくてこれしか言えなかった。
END...
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