自分では平然としてるつもりやった。
悲しいはずはない。
だってほんまに好きなんは名前やから。
むしろ別れてほっとしている自分がいるくらいや。
また名前と会える、って。
それに、俺のことを好いてくれとる気持ちをもう利用しないですむ。
そう思うと申し訳ない気持ちになる。
まさかそれを名前が気付いてたなんて。
「俺な、ほんまはめっちゃ好きな子おんねん」
「うん」
「その子が手に入りそうもなくて、他の子の気持ち利用しとった」
こんなカッコ悪いとこ名前には知られたくない。
カッコええとこだけ見せてたい。
幻滅されるかもしれん。
俺のこと、酷い奴やって思うかもしれん。
それでも名前には俺のことを、良いとこも悪いとこも、もっと知っといて欲しい。
「忍足くんは、そのめっちゃ好きな子に告白しないの?」
したい、ほんまは。
けど、ずっと名前を見とって望みのないことくらい知っとる。
名前は誰にだって優しくて、正面から接する。
俺やって良くて仲の良い友達くらいにしか思うてへんやろう。
「告白もしないで、忍足くんのことを好きな女の子の気持ちに甘えるのは酷いんじゃないの?」
あぁ、ほら、幻滅された。
もうあかんわ。
告白なんて死んでもできへん。
「せやなぁ…。でも、もう告白はできへんな。望みないから」
何だか心が乾いていく気がする。
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