言ってみよう



「ごめんなさい。もう耐えられないよ」



泣きながら言われたのは昨日の帰りのことだった。



いつものように彼女を家まで送って、別れ際に言われた。



三ヶ月。わりと長く続いた方だった。



彼女はよく我慢したと思う。



三ヶ月前、他に好きな子がおるって言うた俺に代わりでいいからと言ったのは彼女だった。



その言葉通り彼女は本当にあの子の代わりとして俺の隣にいた。



どんなに近くにいても俺が見とるのは自分やなくて、違う女。



その事実がどんなに彼女を苦しめたやろう。



俺はこんな付き合い方してばっかりや。



結局、俺を好きでいてくれる子の優しさに甘えてるんやな。



「あれ?忍足くん、どうしたの?」



中庭のベンチの上で寝転んでいたら上から声がした。



目を開けずともわかる。



俺の好きな女の子の声。



「何もないで」



目を閉じたまま答える。



「嘘だ。眉間に皺が寄ってるぞー」



名前がふざけて俺の眉間に指をおく。



その冷たい感覚で目をあけた。



起き上がって、隣に座るように促す。



名前はちょこんと隣に座る。



「別れたんや」



ぽつりと呟く。



「また?忍足くんと出会ってからそう言うのを5回は聞いてる気がするなぁ」



苦笑する。



俺が別れる原因はいつだって名前やった。



名前がほんまに好きやから。



名前以上の女なんて見つけられへんから。



「忍足くんは本当に好きな子と付き合ってるの?」

「え?」



隣を見ると真剣な目をしていた。



「別れちゃった時、いつも申し訳なさそうな顔してる。悲しんでるようにはみえない」



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