腰を右手で抱き寄せられて、包帯の巻かれた左手で顎を上げられる。



蔵君を押し返そうにも上半身が裸やから触れることもできひん。



「く…ら君、離し…んっ」



キスされて私の体は硬直する。



だって私今好きな人にキスされてんやで。



しかも蔵君ええ匂いするし、唇柔らかいし。



どうしよう、めっちゃドキドキする。



唇を離して蔵君は私の首筋に顔を埋める。



外にハネとる蔵君の髪の毛先が私の首や頬に当たってくすぐったいし、濡れてるから冷たい。



蔵君の背中に触れるとピクンと反応した。



「蔵君?」

「嫌やないん?」



蔵君がしゃべるとその息が私の首にかかる。



それは熱っぽくて私の緊張を増幅させた。



「彼氏でもない男にこんなんされて、気持ち悪ないん?」

「…」

「堪忍。抑えられへんかった」



うなだれて私から離れる。



背を向けてカッターシャツを羽織った。



蔵君は無言で制服に着替える。



うちはそれを見てるわけにも行かず、また背を向ける。



沈黙が重い。



「名字さん、もうええよ」



着替え終わった蔵君に言われて振り返る。



蔵君はなんやとてもつらそうな顔をしてた。



「ジャージは今度返してくれたらええから…」



蔵君はそれだけ言ってまた黙ってしまった。



私は蔵君にゆっくり近づいて、抱きついた。



「私、蔵君のこと好きやから嫌やないよ」


遠慮がちに私の背中に蔵君の大きな手が触れた。



その手はもう温かくてほっとする。



届いて、私の気持ち。



念じながらカッターシャツを握る。



「俺も好きやで」



見上げた蔵君の顔はもうつらそうではなくて、ほんのりと赤かった。



END...



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