本来女子である私が踏み入れたらアカン場所。
「大丈夫。部長の俺が言うてるんやから」
手を引っ張って私を部室に入れる。
「堪忍な。男しか居らんからちょっと汚くて」
そうは言うてるけど私が想像してた男子部室よりは綺麗やった。
きっとそれは綺麗好きな蔵君が居てるからなんやろう。
座っとってと言われて近くにあった椅子に座る。
蔵君は白石と名前のかかれたロッカーから何かを取り出してきた。
「はい」
「え?」
私に手渡されたのはテニス部のジャージ。
恐らく蔵君のやろう。
「あ、まだ着てないやつやから綺麗やで」
これは私に着ろって言うてるんやろうか。
でも蔵君やって濡れとるのに。
「ごめんな。男物やからどれもサイズでかくって。でも濡れとんの着とるよりはマシやと思うし」
外出とるから着替え、と言って部室を出て行く。
確かに冷たい濡れた制服をいつまでも着とるわけにもいかへんし、蔵君の優しさに甘えたらええんやろう。
でもこんな好きな人に迷惑かけるようなことできひん。
「蔵君、やっぱりええよ。私は平気やし。蔵君も濡れとるんやから」
ドアの外に居るであろう蔵君に伝える。
「何言うてんの。俺は制服に着替えたらええし、女の子なんやから風邪でもひいたらあかんやろ」
蔵君の言うてることに言い返せずに、素直にジャージを借りることにした。
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