低体温同盟



何で俺がこないくそ真面目に委員会なんてやりに来とるか。



それは気になる人がおるから。



その人はいつも図書室で1人本を読みふけっとる。



図書委員になって良かったと思う瞬間。



彼女は3年。



先輩たちが言うには“雪女”ちゅうあだ名らしい。



どこらへんが雪女なんかわからんけど。



「すみません。貸し出しお願いできますか?」



俺がカウンターにおると彼女が話しかけてきた。



仕事せな、めんどくさい。



でもこの人と話すきっかけになるんなら仕事も悪くない。



「ほな、貸出カード書いて下さい」



俺がめんどくさそうにカードを渡すと彼女は受け取って、その場で書き始めた。



「先輩」



話しかけるとペンを止めて俺の方を向く。


「何で雪女なんスか?」

「え…」



きっと彼女は見ず知らずの後輩にそんなん聞かれるとは思ってなかったんやろう。



困惑した顔をする。



「えーっと…」



彼女は苦笑いをする。



「私、体温低くて…。それに冷え症だから手とか冷たくて。それで昔ついたあだ名なの」



せやったんか。



でも納得や。



彼女を見る限り雪女には見えへん。



別に不気味とかちゃうし。



「ふーん」



俺は興味なさそうな反応をして貸出カードを書いとる彼女の手に触れた。



「ちょっ…」

「全然冷たくないっスわ」



ほんとに冷たくはなかった。



俺自身も低体温やからかもしれへんけど。



彼女の手は女らしい細くて長い指で俺よりだいぶちっこい。



「財前くん、離して」



あれ?俺の名前知ってるんや。



「いやッスわ」



いつまでも触れていたいと思った。



強い独占欲が俺を支配する。



「先輩、俺、多分あんたのこと好きッスわ」



彼女は俺の言葉を聞いて驚いたように目を見開いて俺を見る。



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