春休みが明けた。結局お互いに暇してた私たち3人は何度も遊びに行っていた。 そして今日から私たちは2年生、つまり先輩なわけです。まゆちゃんとみっちゃんとクラス発表を見ると、また3人とも同じクラスだった。 「本当に良かった〜」 「また3人同じクラスだね」 私だけ違うクラスだったらどうしようかと思ってたよ。まゆちゃんやみっちゃんならどこでもやっていけそうだけど、私は慣れるまで大変だから。 「…っげ」 まゆちゃんはクラス発表を見ながら眉をしかめる。そしてみっちゃんも苦笑い。何なに? 「頑張れ、まゆ」 「…最悪だ」 2人の視線の先にはある男の子の名前は、千石清純君。2週間前に出会った軟派な男の子。 3人で新しい教室に入る。そこには既に半分くらい新しいクラスメートがいた。 当然あの目立つオレンジ色の彼もいた。女の子たちと話してるのを南君が呆れた顔で見ている。 「南君、おはよ」 「おはよう。3人ともまたよろしくな」 南君は去年も同じクラスだったしそれなりに仲も良い。 「南、あいつ何とかなんないの」 まゆちゃんはイライラとした口調で南君に言う。あいつは勿論千石君のこと。 千石君は今女の子たちとメールアドレスを交換してる。 携帯を向き合わせては、「ありがとう。今日メールするね」なんて言ってる。 「俺に言うなよ」 「部長でしょ」 「中学の頃の話だろ」 南君は山吹中テニス部の部長をやっていて、千石君はそのエースだったらしい。 南君が部長だったのは知ってたけど、エースの千石君は知らないって不思議過ぎる。 「ほんっと最悪」 「まぁまぁ。まゆは千石君と話さなければいいじゃない」 「そーだけどそーじゃない!!あたしじゃなくて、名前が心配なの」 いきなり名前を呼ばれて南君と話していた私はまゆちゃんを見る。私?私と千石君が何か関係あるのかな。 「私が何か関係あるの?」 「千石が名前に何かしないか心配なの」 「あーなるほど」 「そういうことか(千石の好きそうなタイプだからか)」 みっちゃんと南君は納得して頷く。それより何で納得してるの。 本人である私はわからないよ。 「どういうこと?」 「とにかく!!気をつけて。千石に絶対関わっちゃダメ。つかその前に知り合うな」 無理だよ。だってもう知り合っちゃってるし。同じクラスなのに1年間関わらないなんて絶対不可能。 現にほら、千石君は今近づいて来てる。 「おはよー。まゆちゃんにみさきちゃん、同じクラスだしよろしくね」 「…」 「うん」 まゆちゃんは当然の如く無視。しかもあからさまに嫌そうな顔。流石にそこまでしたら可哀想な気がしてきたよ。 というか南君にはノータッチなんだね。 「それと、名前ちゃんも」 「う、うん」 「はぁ!?」 私は躊躇してからぎこちなく笑った。まゆちゃんは私と千石君が知り合いなことに驚いて、やっと千石君を見た。やっぱりまずかったかな。 「何であんたたち知り合いなの!?」 「この前偶然会ったんだよねー」 千石君は何が嬉しいのか私ににこにこ笑って同意を求める。それを明らかに嫌そうに見るまゆちゃん。その光景に苦笑するみっちゃんと南君。 「千石…」 「何なに?」 「名前に近づくな」 威嚇するようにまゆちゃんが睨みつけた。まゆちゃんが睨むとちょっと(いや、かなりかな)怖い。 流石剣道部期待のエース。 「んー。いくらまゆちゃんのお願いでもそれは無理かな」 「何でよ」 「可愛い女の子が俺を呼んでるから」 ぱっちんとウインクをして笑った。南君はもう呆れて言葉も出ない様子。みっちゃんはクスッと笑った。 「誰もあんたなんて呼んでないから!!」 「名前ちゃんだって俺と話したいよねー」 「名前に話しかけんな。名前で呼ぶな。このナンパ野郎」 「残念ながら、まゆちゃん。それは無理な話だよ。だって俺の席、ここだから」 千石君が指差した席は私の座ってる席の隣。 まゆちゃんは私の前の前。みっちゃんは少し離れた席。南君はみっちゃんの斜め後ろ。 結構バラバラなのに私の隣は千石君。 まゆちゃんが顔をしかめる。何もそんな顔しなくても。千石君はきっと悪い人じゃない。 まゆちゃんがこれだけ嫌うのには何か理由があるのかもしれないけど、千石君が私に害を及ぼすことは多分ないと思う。 「最悪だ…」 「ほら、席つけー」 新しい担任教師が入ってきてみんながそれぞれの席に散っていく。当然まゆちゃんたちも自分の席に戻る。 隣を見ると千石君は嬉しそうに笑ってた。 「千石君、よろしくね」 「うん」 よろしくするなって言ったって無理な話。だって隣の彼はすごく素敵な顔で笑うんだもの。 確かに千石君は女の子に慣れてるっぽいし軽そうだけど。女の子たちが惹かれる理由もわかる気がする。 |