次の日、なかなか寝付けなかったせいですごく眠かった。それにくまもあるし、酷い顔だ。でも学校には行かなきゃ。 昨日花壇の水やりを頼まれたのに、やらずに如雨露を置きっぱなしにして帰ってしまったから今日やらなきゃいけないし。そう思っていつもより早く家を出た。 もし千石君とまゆちゃんが付き合ってたらちゃんと笑えるかなぁ。 二人に酷い態度とったりしないかな。いつも通りできるといいんだけど。 「やっぱり来たね」 「え?」 予想外の人物が花壇の脇に座ってた。私が昨日放置した如雨露もそこにある。 「どうしているの?」 「名前ちゃんが来ると思ったからさ」 千石君は立ち上がって如雨露を渡してくれる。 「これ、名前ちゃんでしょ?」 私は黙ってそれを受け取るしかなかった。つまり私が千石君の告白を見ていたのに気づいてたってこと。 どうしよう。謝った方がいいよね。だって隠れて見てたってことになるわけだし。 「…ごめんなさい。偶然、見ちゃって」 「うん」 「あの、まゆちゃんと、うまく…いった?」 聞きたくて聞きたくないこと。あんなに真剣に告白すればさすがのまゆちゃんも好きになったんじゃないかな。 千石君の本気を受け取ったはず。 「やっぱりね〜。誤解しちゃってると思った」 「え?」 「俺が好きなのはまゆちゃんじゃないよ」 あんなに真剣に好きだって言ってたのに?まゆちゃんが好きなわけじゃないってどういうことだろう。 「俺が好きなのは、キミだよ」 そう言って千石君が私に近づいて来る。キミって…私のこと!?え、嘘でしょう。 だって私のこと好きなんて様子これっぽっちも見せなかったじゃない。そんなはずないよ。 「(あー、やっぱり信じてもらえてないか…。自業自得だけどね…)」 「な、に言ってるの?千石君はまゆちゃん、が好きなんだよね」 「まゆちゃんは俺が名前ちゃんに近づかないようにしてたんだ。名前ちゃんが俺に傷つけられないようにって。でも俺、」 「待って、千石君!!落ち着こう。千石君が私を好きなんて、ないよ。だって女の子はみんな、可愛いんでしょ」 そうだよ。千石君は女の子みんなが可愛いと思ってて。みんなが好きで。私一人を特別好きなんてきっと勘違い。 「そのはずだったんだけど。名前ちゃんが俺の考え方を変えたんだ」 「うそ…。だって昨日まゆちゃんに本気で好きって…」 「まゆちゃんたら俺が名前ちゃんに告白するの許してくれないんだもん」 千石君は昨日のことを思い出したのか苦笑いした。ということは千石君が好きなのは、まゆちゃんじゃなくて、私…?私でいいのかな。 「もう一度言うよ。俺は名前ちゃんが好きなんだ。付き合ってくれないかな?」 あぁ、もう。嬉し過ぎる。こんなことになるなんて思ってなかったから。だって千石君が告白してくれるなんて誰が考えるっていうの。 しかも私みたいな超絶美人なわけでもない平凡な女の子に。 「俺、本気だよ。信じてもらえないなら、何度だって…」 「私、も。私も千石君のことが好き…です」 千石君の本気信じるよ。信じさせて。 「本当に!?」 「うん、本当」 笑顔で頷くと千石君が目を大きくして、そして私の腕を引っ張った。私は簡単に千石君に引き寄せられて、千石君の胸に収まる。は、恥ずかしい。 「良かった。断られたらどうしようかと思った…」 「断らない、よ。千石君のこと好きだもん」 「俺も!!俺も名前ちゃんのこと好き。大好き!!」 そう言ってくれた千石君の顔が格好良くて。私の顔は多分今真っ赤だ。それを隠すように私は千石君に抱きついた。 「付き合ってくれる?」 「もちろん。私からもお願いします」 私たちは二人で笑った。それだけで私はすごく幸せで。千石君もそう思ってくれてたらいいなぁって思った。 千石君と出会っていろんな色の気持ちを知った。きっとそれはこれからも同じ。 綺麗な色だけじゃないかもしれないけれど、千石君と一緒ならなんだっていい。だっていつでも千石君を想っているから。 END... |