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高校に入ってから気付いたんだ。興味本位で覗いた強豪と噂のバスケ部にあの青い髪の彼がいることに。
そして彼に近づく美人な女の子。すごく仲良さげな雰囲気だった。当然そんな二人は噂されるんだけど。両人否定を続けていた。


それなのに。


いつからか青峰君は否定しなくなった。それは彼がマネージャーの桃井さんのことを好きになったからなのか、それとももう付き合いだしたからなのか。私にはわからない。気にはなるけど、そんなの聞けない。聞きたくない。そしてその理由もわからない。


そんな悶々とした日々が流れて夏が来て、やっぱり二人を目で追っている私がいて気付いたんだ。


ああ、私ってあの始めて会ったあのときから青峰君に恋をしていたんだ、と。


だけど気付いたからといって私は何も行動には移さない。練習を見に行ったりだとか、話しかけたりだとか、そういったことは一切しない。
ただ遠くから眺めてるだけ。それで幸せ。

だから目があった気がしたことに心底驚いた。でもきっと気のせいだ。屋上と地上なんて遠い距離で目が合うなんてありえない。ただの私の思い込みだ。



「青山さん!?」
「…桜井君?どうしたの?」



廊下で偶然すれ違った桜井君は中学が一緒だった人だ。普段の彼からは想像もつかないほどにバスケが上手いらしい。見たことは無いからよくは知らないのだけれど。なんでも青峰君と同じように一年生にしてレギュラーをとったとかなんとか。強豪桐皇バスケ部でそれはすごいことのはずだ。



「あ、スイマセン!!声なんてかけちゃってスイマセン!!ただ学校で会ったの初めてだったから」



慌てて謝る姿は中学のときと何も変わっていない。思えばもともとこんな人だったように思う。中学では一度だけクラスが同じだったけど、やっぱり思い出すのは謝っている姿だ。

何も声をかけたくらいで謝らなくてもいいのに。



「そっか。そうかも。私は桜井君がバスケ部で活躍してるってたくさん聞いてるから久しぶりな感じしないよ」
「いや、活躍だなんて」



また口癖のような謝罪を口にしようとした瞬間に、桜井君の言葉は途切れた。それは誰かが桜井君を呼んだから。



「良」
「青峰さん!」



アオミネ…あおみね…青峰君!?

彼が私の背後にいる。だめだ、近づいてはいけない。今まで通り遠くから見ていなくては。



「じゃ、じゃあまたね、桜井君」


私は逃げるようにその場を立ち去った。いいや、私は青峰君から逃げた。