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彼と初めて会ったのは中学の時だった。









カシャン―――…



当時中学生の私は、所属していた手芸部の活動が長引いて珍しく帰りが遅くなっていた。
いつもならとうに家にいてお母さんが夕飯を作るのを手伝っていただろうに、その日の私は街灯だけが光る暗い夜道を歩いていた。


帰り道にある公園で聞こえた音に足を止めたのは偶然だった。

その公園は小さな子供たちが遊ぶ遊具とかがあるのではない。バスケットリングがある。街にこういった広場があるのは珍しいのかもしれないけれど、この街にはストリートテニスだとかそういうものまである。
市民の触れ合いの場なんだろう。


そんなところでこんな夜に音がするのは不可解だった。だからつい足を止めて近づいた。


そこにいたのは青い髪の彼。
きっと年上。背が高くてバスケットゴールに吸い込まれるボールを放つそのフォームに見とれてしまった。
ゴールを決めた時の彼は少年のような笑顔を浮かべていて、本当にバスケが好きなんだな、と思った。



「お前」
「へっ!?」



そんな彼が振り返って私に声をかける。気付かれていたなんて思わなかった。決して隠れていたわけではないけれど、そう思わせる程彼は集中しているように見えたんだ。



「何見てるわけ?」



鋭い目で尋ねられて、私はびくりと身を震わせた。



「や、あの、楽しそうだなと思って…すみません」



まっすぐ彼の目を見ることができずに逸らしながら頭を下げた。早く謝ってこの場から立ち去りたかった。私は彼にとって邪魔以外の何者でもないだろうから。



「あ?ああ、いや、悪ぃ。びびらすつもりはなかったんだ」



ボールを片手に持ったまま困ったように後頭部をガシガシと掻いた。あれ、全然怒っていない。



「そんなとこで見てねぇでこっちに来いよ」



あろうことか彼は、にかっと笑って私に手招きをしたのだ。