季節は夏。 それは私の大好きな季節。それは大好きな彼を連想させる。 真っ青な空。真っ青な海。真っ青な、彼。 きっと、いや、絶対私なんかには気付いていないのだろうけど。だって彼の周りには、バスケがあって、仲間がいて、彼女がいる。 女の子って言葉を具現化したような容姿の彼女なんだ。長い髪はつやつやで、体も出るところは出てて、さらに性格もいい。私とは大違い。比べるのだって申し訳ないわ。 そんな人だから私は近づこうなんて思わない。遠くから見てるだけでいいの。それで満足なの。彼女と幸せそうに過ごす彼を見てるだけで私は幸せなの。 「あ、青峰君!またサボろうとしてるでしょ!」 長い髪を揺らして大きな声を上げながら私の想い人、青峰君に近づくのは彼の彼女の桃井さん。いつ見ても美人だ。 「 」 ここからでは聞こえない声で何かを言って、彼の腕を掴む桃井さんの腕をいとも簡単に振りほどく。そしてポケットに手を突っ込んだまま桃井さんを置いて歩き出す。 「もう!!青峰君ったら!」 桃井さんの大きな声に気だるそうに振り向いた青峰君。 「あ…」 その彼と目が合ってしまった。決して覗き見をしていたわけではないのだけれど。 天気がいいから気分転換に屋上にいただけだった。そしたら青峰君が校舎から出てきたから少し視線をそっちにやっていただけ。ただそれだけだったのに。 気付かれてしまった、確実に。だって彼の目は私をじっと睨みつけるように見ているもの。 私はその視線から逃げるように屋上のフェンスから遠ざかった。顔まで見えていなかったと思いたい。そうであったなら目立つ方ではない私が、彼に見つかるわけがないのだ。 見つかっちゃだめ。好きでいるだけで幸せなのだから。近づいたらもっと求めてしまう。気のせい、気のせい。 人間は貪欲な生き物だ。 きっと私もその枠から外れることは無い。今は好きでいられるだけで十分でも、きっとその次は会いたくなる。話したくなる。触れたくなる。好きになって欲しくなる。 そんなに多くを望んじゃいけないと思う。それに青峰君には桃井さんという彼女がいるんだから。奪うつもりなんてない。奪えるとだって思わない。 だから見てるだけ。私は見ているだけで満足しなきゃならないの。 |