act.13




Kenya side



4人でお好み焼き屋に行った日、名前ちゃんの好きな奴を知った。



光が立ち去った後、名前ちゃんは哀しそうな顔で「財前…」と呟いた。



応援したかったんや。



白石と別れて辛い思いした名前ちゃんがまた新しい恋をしてたから。



そして光は多分今でも名前ちゃんが好きや。



名前ちゃんは中学で光と同じクラスで、それが白石と知り合ったきっかけ。



光はずっとそばで好きな女の子が別の男を好きなんを見てた。



一途に名前ちゃんを想ってた。



だから彼女ができても長続きせえへんし、だんだん彼女を作らなくなった。



それなのに今のタイミングで彼女作るってどーいうことなん。



冗談でもあの一緒にいた女の子が彼女やなんて聞きたなかった。



「くそっ」



部室のロッカーを軽く蹴ったら白石に睨まれた。



白石も負い目から名前ちゃんのこと気にしとるから機嫌が悪い。



「謙也、財前はほんまにこれでええんやろか」

「ええわけないやろ」



ほんまの好きな奴とは両想いなんに。



何で2人の想いは相手に届かないんや。



「名前ちゃんも言ってまえばええんに」



やっとまた好きな奴ができたのに。



名前ちゃんが身をひく必要はない。



「名前は怖いんやろな」

「何が」

「例えば財前と付き合うたとして、モテる彼氏は他校生で、また俺みたいに捨てられるんやないか、って」

「捨てたんとちゃうやろ」



白石は苦笑した。



捨てたわけやない。



ちゃんとお互いに納得したんやし。



それになまえが現れなければよかったなんて思わへん。



「それに光はそんなんせえへん。何年一途に名前ちゃんだけ見とるかっちゅー話や」

「名前はそれを知らんから」



知っていたならどんなに簡単にことが進むやろう。



好きな相手の気持ちほどわからんもんやけど、今ほどわかって欲しいと思ったことはない。



2人が通じ合えばええのに。



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