act.17
珍しく千歳先輩からメール。
内容を見て少し眉根を寄せた。
「名前に何かあった?」
「は?」
ひょっこり図書室に現れたのはなまえ先輩。
先輩の言うとおり内容は名字のこと。
なんでわかったんやろう。
「名前のことが絡むと財前はこうゆう顔するんだよ」
なまえ先輩は眉間に皺を寄せてしかめっ面をした。
「ぶさっ!!」
そんなブサイクな顔してへんし。
それに眉間に皺なんて多分俺にはようあること。
必ずしもそれが名字と関係あるわけやないし。
「黙ろうか。で、何があった?」
俺は無言で自分の携帯を差し出した。
なまえ先輩はそれを受け取ってメールを読んだ。
「好きな人が優しくて諦められないで泣いてたってこと?」
「みたいッスわ」
「あのさ、言っていい…?」
真剣な目で俺を窺うように聞く。
俺は頬杖をついたまま頷いた。
「どーぞ」
「名前の好きな人ってぶっちゃけ財前だったりするんじゃないの?」
「…は?」
一瞬何言っとんのか理解し難かった。
そして今までを思い浮かべて笑った。
「何で笑うの。有り得ない話じゃないじゃん」
先輩は俺が笑っとるんが気にくわないのか口を尖らせた。
確かに有り得ない話やない。
でも違うと思う。
「あいつは俺の方なんて振り向かへん。せやから今みょうじと付き合うてるんやし」
振り向いてくれる可能性があるなら彼女なんてつくらん。
でも別に好きな奴が居るって聞いて、しゃーないと思った。
よう考えたらわかる。
だってあいつは部長と付き合うてた。
俺と部長じゃ全然違う。
「告白しないの?名前に」
「しない」
即答する。
俺が告白したってあいつは困るだけやろ。
「夏休みにあたしには蔵ノ介に告白しろって言ったくせに」
「…」
「後悔するよ。てかしてたんでしょ」
中3の時、告白しなかったことを後悔してた。
俺はまたそれを繰り返すつもりなんやろうか。
「赤いピアス持って告白したら?」
先輩は、あれは御守りでしょ?って笑った。
.
←→