それでも君がいい

高校の同級生設定謙也の人違いの告白から始まる恋切甘でお願いします

今私の思考回路で理解できるんは、今告白されているやろうってことと、その彼が私の想い人やということ。

それが忍足謙也君。

同じクラスでクラスのムードメーカー。金髪という一見怖そうで不良のような色をした髪も、彼の人格からか太陽のような綺麗な色に見えてしまう。いつからか、その姿を見ては心臓がどきどきと鳴るようになって、好きやと自覚してからは見るだけで顔が赤くなってしまいそうになった。

そんな私は忍足君とほとんど会話をしたことはない。


そのはずやのに、今、その忍足君に多分告白されとる。


多分。その言葉を外すことはできへんのは理由があるんや。



「あの時から名字のこと気になり初めて…そんで、好きやねん」



好きという至極具体的で直接的な言葉。それを好きな人から貰えたのに、私は素直に喜ぶことができへん。それもこれも、そこまでに至る忍足君の言葉が原因。

忍足君の言う、あの時。それは私の知らないことやから。




学年が上がって少しした頃、忍足君は私を見かけたんやとか。校舎裏という人気の少ないその場所で、男の子と会話をしとった私を。



「ごめん、俺もう自分とは付き合われへん」

「そんな…なんでなん?」



震える声と共に詰め寄った私をゆっくりと、やけど、しっかりと押し戻してその男の子は帰ってしまったらしい。私はそこで暫く泣いて、帰っていったんやって。




「あの後ろ姿を見て、明日は名字は元気ないんかもしれへんって思った。せやけど、名字は次の日ちゃんと笑っててん」



もうお分かりやろう。


忍足君の言うフラれとった私、いや女の子は私やない。当然フラれてなんてないし、そもそも相手やっておらん。私は同じクラスになってからずっと忍足君のことが好きやったんやから。



「最初はな、空元気なんかなって思っててんけど、ちゃんと笑ってて。強い女の子なんやなって思った。それから、俺、名字の笑顔から目が話せなくなってもうて」



ははっと男の子にしては可愛らしい照れた笑顔を見せて、私に優しい目を向ける。


忍足君はそのフラれとった女の子を完全に私やと思い込んどる。その優しい瞳は私に向けられたものやない。名前も顔も知らない女の子、その子に向けられたものや。それは私、やない。



「偶然とは言え覗き見したみたいでほんま悪かったと思うてるけど、俺の、」

「忍足君」



黙っとった私が怒っとるとでも思ったのか、焦るように言い訳を述べ始めたけど、ちゃうねん。

怒ってなんてない。それよりむしろ、泣きたいとさえ思ってる。私の好きな人は、違う人を見とるから。



「それ…私やない……」



震える小さな声で真実を伝える。


このまま受け入れてしまえば、付き合えるかもしれへん。私も好きやと言えば、恋人同士になれるかもしれへん。せやけど、そんなんできひん。そんな嘘偽りの関係は、脆くて虚しいだけやから。



「私、フラれてへんし、多分誰かと間違ってる…」

「なんやて!?」



ちゃんと、言えた。せやけど同時に、私の恋も終わったんやな。忍足君の好きな人は私やない。…失恋、か。



「……その女の子、見つかるとええね」



それ以上この場にいることができんくて、私は立ち去ろうとした。けど、その私の足を止めたのは忍足君の言葉。



「そ、そんなん!そんなんどうでもええ!確かにきっかけは勘違いやったけど、でも俺は今の名字の笑顔が好きや」



その言葉と一緒に私の肩を掴んで向き合うように振り向かせられた。その真剣な眼は決して嘘を言ってるような目やなくて、忍足君の心を映しとるようやった。

驚いて瞳を大きく見開けば、忍足君はそれからいつもの太陽のような笑みを浮かべて、付き合って欲しいと言うてきた。



「ええ、の…私で?私全然強い子とちゃうよ」



忍足君の好きになった子はフラれても立ち上がった強い女の子。でも私はその子やないし、ましてや強くだってない。

笑顔が好き、そう言ってくれてもそれはきっかけがあっての気持ちやし、私の笑顔なんて特別なもんでも何でもない。そんなん、付き合ってもすぐに幻滅されるだけや。

持ち上げて落とされるなんて、絶対に嫌や。それなら最初からはっきり言うてくれた方がええ。



「私、忍足君の想像と全然ちゃう……」



せやから私はこの告白を受けることはできへん。受けたくても受けられへん。



「別に強くなくていい。俺は、俺の隣で名字が笑ってくれとったらええねん。せやから俺と付き合うて」



肩を引かれてそのまま忍足君の胸の中に倒れ込んだ。そのまま腕を回されて抱き締められる。私より遥かに背の高い忍足君の心臓からはばくんばくんと大きな音が聞こえて、緊張が伝わってくる。それと同時になんや落ち着く。



「ふふっ」

「…名字?」

「忍足君、心臓鳴りすぎ!あはは」

「なっ…!!そら告白しとるんやから当たり前やろ!!」



慌てて私を離す彼に、今度は私から飛びついた。そんないきなりの衝撃やって受け止めることのできるんは、きっとテニスで鍛えたこの厚い筋肉があるからやろう。



「私も好きです。付き合うてください」



上を見上げて笑顔を向けると、顔を真っ赤にした忍足君の顔。それがなんや可愛くてまた笑ってしまった。


きっと私は、ずっと貴方の隣で笑っとるよ。





真由美様、リクエストありがとうございました!

久しぶりに謙也を書いたので、ちょっとキャラが掴めてないかもしれません。私はいつもちょっとアホなキャラに書きがちなので…。
久しぶりに書けて楽しかったです。

またお時間ある時に試書にいらしてください!

2014/12/31 由宇

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