ちー[今日は従姉妹と、その彼氏の体育祭行ってくる]



成り行きで行くことになってしまった四天宝寺高校の体育祭。一つ下の従姉妹、千紘がどうしてもというのでやむを得ずや。

何でも彼氏を見に行きたいんやけど、一人で来るのは心配されたとか。親友のはるちゃんは部活やから一緒に行ける人がいなくて何度も何度も頼まれた。

うちは千紘ラブやし、用事もないから断らへんけど、千紘がこんなにもお願いしてくるのは珍しい。いつもどこか遠慮をしてる子やから。



ひかる[@ちー 今日俺も体育祭]



リプ通知が来て開いてみれば、現在かなり仲良くしとる男の子、ひかるからリプが来とった。


ひかるは関西住みの男子高校生でテニス部。善哉が大好きで、それから名字が財前という。名字を直接名乗られたことはないけれど、どうやらひかるのアカウントは本アカらしく、ホーム画面を覗くとリア友らしきアカウントと本名でやり取りしとる。

アカウント名のひかるは本名かどうかはわからへんけど、男の子が敢えてそんな女にもありそうな名前をつけないんやないかと考えると本名かもしれへん。



ちー[@ひかる 偶然やね。体育祭頑張れー(●'д')b]
ひかる[@ちー ん、さんきゅ!]



ひかるが離脱したのを確認してうちも家を出る準備を始める。今日はうちは従姉妹のおまけみたいなもんやし、面倒やから適当な格好でええか。気合をいれた服装をする必要はない。



「名前ちゃん、お待たせ」

「おー、千紘!可愛らしい格好しとるね。彼氏の力はすごいな」

「も、もう!やめてよー!」



待ち合わせ場所で千紘と落ち合えば、すごく可愛らしい格好。やっぱ彼氏には可愛ええと思って欲しいんやろうな。

ふわふわのシフォンのワンピースにカーディガン。髪の毛も巻いちゃったりして、全身から女の子オーラが滲みでとる。

その隣に並ぶ私はラフなブラウスにスキニーでめっちゃシンプル。大人っぽいと言うたら聞こえはええけど、ただやる気がないだけ。


一度も行ったことのない四天宝寺高校に千紘は間違えることなくさくさく進む。幼なじみの謙也君も通ってるとこやし、前から何度か行ったことがあるんやろう。



「千紘」



四天宝寺高校の校門前にありえへんほどのイケメンがいて、千紘に爽やかに手を振っているきっとあれが彼氏や。なんやあれ、アイドルかなんかか。めっちゃイケメンやんか。謙也君やってイケメンやけど、彼氏さんも相当や。



「どうも、千紘の彼氏の白石蔵ノ介です」



千紘の隣にいるうちに気づいて丁寧に挨拶をしてくる白石君。謙也君のチームメイトって言うてたからうちと同い年でテニス部なんやな。

それにしても。ただの体操服姿とは思えへんかっこ良さやな。それに礼儀正しい。そして優しいらしい。もう完璧やん。ほんま千紘にこんな素敵な人が現れて良かった。



「千紘がいつもお世話になっとります。従姉妹の名字名前です」



簡単に挨拶を交わして校門をくぐる。


実は初めて共学の学校に足を踏み入れた。千紘もうちも二人とも中学から女子校に通うからこんなに身近に男子が居るんは新鮮。

うちに至っては一番近くに居る男子なんて数度しか会うたことのない謙也君やと思う。



「俺競技に参加しにいってまうから名字さんと見とってな」



千紘の頭をさらりと撫でて耳元に口を近づける。何かをぼそりと呟いてすっと離れた。千紘は顔を真っ赤にして俯いてしまった。その様子を見て白石君も少し頬を赤くして笑っとる。なんやこの初々しいカップルは。



「ほなまた昼休みに」

「は、はい。応援してますね」



千紘が嬉しそうに白石君に手を振る。


ああ、和む。千紘はほんま可愛ええな。彼氏の前やと可愛さ倍増や。これは白石君に感謝せなあかんな。ありがとう白石君。



「どっか見やすいとこ行こう」



うちは小柄な千紘より幾分見やすいけどそれでもこの人混みで見るんはそこそこ苦労する。一番前とは言わなくても千紘が白石君を見れるとこまで移動せなあかん。


しかし白石君はイケメンやったなー。千紘はめっちゃ可愛ええからお似合いや。



「白石君は何の競技に出るん?」



校門でもらったプログラムを見ながら三年男子と書いてあるところを探す。



「全員参加のやつとリレーって言ってたよ。謙也くんと競争なんだって」


そう言えば謙也君は走るのが速いとかなんとか言ってたっけか。一番の見物はリレーかな。あと興味あるんは騎馬戦。女子高ではそんなに荒々しい競技あらへんから男子がやるのはすごく見てみたい。どんなんなんやろ。



「あ、謙也くんが走ってる!!早ーい!!」



100m走で断トツトップでゴールする金髪。太陽にキラキラ輝いとって、そしてその笑顔もまた満面の笑みや。


あれと張り合うってことは白石君も相当速いんやろうな。うん、リレーが楽しみや。