プレゼント二つ







私の大好きな彼はデータマンだ。参謀と呼ばれるほどに。彼にわからないことはないのかもしれない。



「蓮二ー」



後ろから抱きつけば、きっと彼はあの言葉を発するだろう。



「誕生日おめでとう」

「…ありがとう」



やっぱり。予想通り。

蓮二はいつも欲しい言葉をくれるけれど、それが面白くない時がある。だって何だか蓮二に上手く扱われてる気がするんだ。どーせ欲しい物だって調査済みで欲しい物くれるんだ。いや、それでいいんだけど。幸せなんだけど。



「何を膨れてるんだ、名前」



おめでとうと言ってくれた相手に膨れっ面なんて蓮二には不可解なんだろう。大抵のことはデータでわかるくせに私の気持ちはわかってくれてないらしい。


蓮二が悪いんじゃない。わかってる。

友達に話しても良い彼氏じゃんって言われるもん。実際素敵な彼氏だと思うし、大好きなのは変わらない。



「何でもない」

「?そうか。ほらプレゼントだ」


ラッピングでわかる。私が好きなブランド。リボンをほどき、ラッピングを外せば、私が欲しかった腕時計。でも欲しかった物だからって驚いたりはしない。

何故なら相手が柳蓮二だから。



「ありがとう」



私は無理矢理に作った笑顔を張り付けてお礼を言う。嬉しいよ、勿論。

でも付き合ってる時間が長くなるにつれて、思い通りになった時の驚きは薄れていく。だってこれが柳蓮二という男だから。私を喜ばせてくれようとしてるのはわかるけど、私までも蓮二の行動が予想できるようになってきちゃってる。



「嬉しいよ」

「『嬉しいよ』とお前は言うだろうな」

「…さすが。蓮二には何でもわかるんだね」



にこりと笑って事も無げに会話を続けようとすると、蓮二の細くて長い人差し指が私の唇に触れた。予想外の蓮二の行動にどきんと心臓が音を建てた。私が言葉を発しないと、蓮二は腕をおろした。



「名前のことで俺にわからないことはない」

「…そう」

「そう思っていたのに、わからないんだ」



目を伏せて眉間に皺を寄せる。そうして私に視線を移して、蓮二の手が私の頬を捕らえた。



「何が不満なんだ?」



蓮二にはわかっていた。私が現状に不満を持っていることが。だからこうして知ろうとしてくれてる。



「…ないよ、そんなもの。プレゼントありがとう」



私はちゃんと笑顔を作れてるよね。不満なんかないって顔出来てるよね。蓮二は百点満点の彼氏なんだから。



「名前、言うつもりはないんだな」



ふぅっと息を吐いて私から離れる。そして鞄から何かを取り出した。細長い箱。それも綺麗なラッピングが施されている。



「え?」

「誕生日プレゼントだ」

「だってさっき時計もらったよ?」



いいから開けてみろ、と促す蓮二に従って、ラッピングを丁寧にあける。蓋をあけると、シンプルだけど可愛らしいネックレスが輝いていた。



「蓮二、これ…」



ネックレスから視線を蓮二に移すと、蓮二はふっと笑って私の手からネックレスを取る。それを後ろに回って着けてくれて、また戻ってきた。私の胸元で存在を主張するネックレスを見て一言呟いた。


「やはり、似合うな」

「二つもプレゼント貰えないよ!!」

「いいんだ、これは俺が渡したかったものだから」



蓮二に引き寄せられて彼の胸の中に収まる。テニスで鍛え上げられた逞しい体に抱き締められて私の心拍数は急上昇する。それを知ってか知らずか、蓮二はクスクス笑う。あ、この笑いは私の反応を見て楽しんでる笑いだ。



「…さっきの演技でしょ」



わからないって言ったの嘘だったんだ。私が不満に思ってるのわかってたからこの二つ目のプレゼントなんていうサプライズを仕掛けてきたんだ。



「さぁな」



蓮二はしれっと答えて私の耳元にその薄く形が整っている唇を寄せる。艶々な黒髪が私の頬に掛かって蓮二との距離の近さを実感する。


「名前、誕生日おめでとう」



耳元で低く囁かれた言葉に私は顔を真っ赤にしてありがとうと返すことしかできなかった。












まりるさぁぁああぁん!!お誕生日おめでとう!
遅くなってごめんね。しかも久しく柳書いてないからキャラ崩壊でごめんね。駄作でごめんね。
よし、思う存分謝った←
この前はありがとう!また会いたいです!
素敵な一年を過ごしてください(*´∀`)

2013.9.6 由宇



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