昨日の帰りに謙也くんに、白石さんに惚れただろって聞かれて、わたしはとっさに違うと言った。

だってわからないもん。確かにかっこよかったとは思うけど。



白石さんは謙也くんと同じくらい、むしろそれ以上にかっこよくて、笑顔が素敵で。

謙也くんみたいにお兄ちゃんみたい、ではなくて完全に男の人だった。



だから笑顔を向けられてドキドキしたし、話すのに緊張しちゃったのかな。男の子に慣れてないわたしにはそれが何なのかどうかわからない。




でも、今日は何だかずっと白石さんのこと考えちゃうんだよね。あの笑顔を思い出すと、心臓がきゅうっと鳴る。



「はぁ」

「どうしたん、名前?今日めっちゃ溜め息吐いとるけど」

「はるちゃん」



隣の席のはるちゃんがわたしの溜め息を聞いて声をかけてくれる。


はるちゃんは中学校から一緒の親友。お姉さんみたいですごく頼りになる。しかも可愛いからナンパとかされちゃうくらいモテる。



「なんか、うん、変だよね」

「いや、よくわからんのやけど?昨日何かあったん?」



わたしははるちゃんに昨日あったことを説明した。


偶然幼なじみと帰りにあったこと。

その友達がとんでもなくイケメンなこと。

しかもそのイケメンは性格も優しいこと。

今日は朝から彼のことを考えてしまうこと。



白石さんのことが、気になってしょうがない。



「それさぁ、もしかして…恋やない?」

「鯉?」

「そーそー、池におるんよね…ってちゃうから!!恋や、恋!!恋愛!!」



恋?そんな初対面の人に恋なんてするものなのかな。

それに白石さんは謙也くんのお友達だし。うん、やっぱり違うよ。ただかっこいいからちょっとときめいちゃっただけ。



「それはないよ。だってかっこよすぎるもん。きっとアイドル的な感覚だよ」

「でもアイドルやないやん。幼なじみの友達やろ。アイドルなんかよりずっと手届くで」



はるちゃんはそう言うけど、きっと白石さんには会えない。

学校違うし、謙也くんはいつも部活で帰りが遅いみたいだから白石さんも遅いはず。昨日出会ったのは本当に偶然なんだもん。


それに謙也くん同様かっこいい白石さんがモテないわけないし、もしかしたら彼女だっているかもしれない。


やっぱりわたしは白石さんに恋してる訳じゃないよ。



「別にいいの。彼氏が欲しいわけじゃないもん。わたしにははるちゃんがいるし」

「それとこれとは違うやん」



実際のところ、彼氏は、欲しい。

周りを見たらカップルがいる、そんな状況にいたら恋愛だってしてみたくなる。


でもわたしは恋なんてしたことない。恋が少女漫画で読むようなロマンチックで甘いものだと思ってるうぶな子供。彼氏なんてきっとまだしばらくはできないよ。



「あ、はるちゃん。メール来たからちょっと待って」



ポケットが震えたのを感じて携帯を取り出す。メールボックスを見てみると謙也くんからだった。



「謙也くんからだ」

「何だ、幼なじみか」



カチカチといじってメールを開けてみる。






…え!?嘘…?






「どないしたん?」

「ど、どないしましょう…」



わたしは携帯をはるちゃんに見せる。勿論謙也くんからの受信メールの画面のまま。



「普通に、ええよって言えばええやん!!」



はるちゃんが返してくれた携帯をもう一度見る。やっぱりわたしの見間違いじゃないよね。本当に書いてあるよね。






『白石が名前のメアド知りたいんやて。教えてええ?』






それは、つまり白石さんとメールができるってこと。




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