付き合って数日目。わたしにはある任務があった。

それははるちゃんの今日の放課後の予定を聞き出すこと。そしてあわよくば放課後わたしについてきてもらうこと。



「…ほーん。結局付き合うことになったんや」



お昼休み、お弁当の中のおかずをぱくぱくと口に入れるはるちゃんに問い詰められたから、全部を話した。最近のわたしの機嫌の良さから何かあると思ってたみたい。

あんな素敵な彼氏ができるなんて思ってもいなかったし、好きな人と付き合えて喜ばないわけがない。



「で、うちに今日の放課後の予定を聞いた理由は?」

「実は…」



今日の部活に見学に来ないかって誘われたんだ。しかも花女まで迎えに来てくれるって言われた。

そんなことしたら、すごくすごーくカッコいい白石さんは女子高生たちに囲まれちゃうもん。そんなのやだ。だから自分で行くよって言ったのに、一人で来るのは心配だからって。


というわけではるちゃんを誘ってるんだけど。



「いやいや、うち今日は部活やし」



首を横に振られてしまった。今更一人で行くって言ったら怒られちゃうかな。でも一人で行けるけどなぁ。



「い、イケメンいっぱいいるよ…!!」



必死で誘うもはるちゃんの答えはノー。


うぅ…仕方ない。白石さんには内緒で一人で行こう。大丈夫。駅からそんなに遠くないし迷わず行けるはず。


あぁ、楽しみだなぁ。白石さんがテニスしてるの見るのどきどきしちゃう。謙也くんもテニスしてるときが一番かっこいいし、きっと白石さんもそうだろうな。











そわそわしながら迎えた放課後。

少しでも早く行きたい。



「なぁなぁ、門のところにイケメンおるらしいで」

「ほんまに?見に行こうやー」



ホームルームが終わって教室を出ればそんな声がちらほら。


イケメン…か。でも白石さんよりイケメンなんていないもん。興味ないや。そんなことより急いで行かなきゃ。


校門に近づくにつれて増える人だかり。やっぱり花女の生徒たちはイケメンが大好きみたい。



「…せやから、俺待ってる子おんねんて。すまんなぁ」



無関心に通りすぎようとすれば聞き覚えのある声がした。低くて落ち着く、それでいて爽やかな素敵ボイス。


え…?この声…って。


身長がそんなに高くないわたしには、女子高生たちの奥のイケメンさんの顔は見えない。

…訳がない。


群がる女子高生から頭ひとつ飛び出てるのは予想通りのイケメン。紛れもないわたしの彼氏、制服姿の白石さんその人だった。


驚きで足を止めて集団の中心にいる白石さんを見ていれば、目がばっちりあった。

その瞬間白石さんは微笑んで、通してやって言いながら集団から出てきてわたしの目の前に立つ。



「名字さん」

「な、え?何で、ですか?え?あれ?」



状況が整理できなくて慌てているとわたしの頭に大きくて温かい掌が落ちてきた。



「迎えにきたで」



照れたようにはにかむ白石さんにわたしはきゅんとする。

迎えに来るなんて聞いてないもん。友達と行くって伝えてあったのに、来てくれるなんて思わなかった。



「お友達さんはどないしたん?」

「こ、これなくなってしまって…」



素敵すぎる白石さんと目を合わせることができなくて、目をきょろきょろと動かす。そのまま下を向いて、顔の熱を上げる。きっと今真っ赤だ。



「そうなんや。ほな、行こか」



自然な動きでわたしの右手をとる。そのまま手を繋いで歩きだした。

周りの花女生たちはきょとんとしてわたしたちを見ながら固まっていた。




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