きっとわたしの顔は茹で蛸のように真っ赤で。白石さんの顔を直視することはできなくて。
でも誤解は解きたいよ。
わたしは白石さんのことが好きなんだもん。謙也くんでも他の男の子でもなくて、白石さんが好き。
「名字さん」
「は、はい!!!」
白石さんはわたしをじっと見つめて、そしてにっこりと笑った。
「無理して応えてくれようとしなくてもええんやで。俺が勝手に言っただけやから」
だめ。
だめだよ。弱気になっちゃ。
言わなきゃ。好きだって言うだけだもん。
わたしは手をぎゅっと握って大きく息を吸い込んだ。それから唇を舐めて、もう一度白石さんを見た。
「す…っきなんです」
今また顔赤くなったかもしれない。顔だけじゃなくて首まで真っ赤かもしれない。
すごく、すごく恥ずかしい。 でも伝えたかった。白石さんのことが好きだって知って欲しいから。
わたしは、他の誰でもなく、白石さんが、好き…。
「…」
白石さんは瞬きを数回して、わたしを見ている。反応が、ない。
「…そ、うなんや!そないに好きな男がおるんやな!」
やっと返ってきた反応は想像とは違うものだった。 わざとらしくあははって笑って、それから頑張りやって言われた。
…え!?今ので伝わってないの!?
「いや、あの…」
「あー俺なんかと居ったらあかんな!ほなな、名字さん」
早々に去ろうとする白石さん。背を向けて来た道を戻っていく。
嘘だよね?
ちゃんと好きって言ったのに。伝わってないなんて、嘘だよね。
少し遠ざかっている白石さんの背中を見つめる。胸がぎゅうっとな る。
好きなの。大好きなんだもん。
わたしはその背中に向かって走る。そんなに遠い距離じゃない。む しろ近い。だから離れていかないで。
「うおっ!!!」
後ろから白石さんにぎゅっと抱きつく。
筋肉質な大きくて広い背中。白石さんの優しい匂いが鼻からすっと入ってくる。
「好きなんです、白石さんが」
わたしの心臓のドキドキはきっと背中から伝わってる。恥ずかしい。でもわたしの気持ちを知って欲しいんだもん。
「名字さん…手離して」
白石さんのお腹に回す手をやんわりと解く。それから向き直ってわたしをじっと見つめた。
その茶色い瞳に映されるわたしはどんなふうに見えているんだろう。
「俺のこと好きってほんまなん?」
こくりと頷くと同時に腕をぐいっと引かれた。わたしはよろめい て、わっと声を上げると、白石さんが抱き止めてくれた。わたしは今白石さんの腕のなか。
「めっちゃ嬉しい!おおきに」
上から見下ろす白石さんの顔はすごく優しくて、わたしはまた顔を真っ赤にする。
好き。ほんとにほんとに大好き。
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