自分でも随分無鉄砲な告白やったと思う。だって名字さんは、謙也のことが好きなんはわかっとるから。

抱き締めて、距離を無くして押し付けるように言ってしまった俺。ほんまカッコ悪い。断られてもええ。ただ俺の気持ちを知っとって欲しい。



告白がこんなに勇気を必要とするなんて思わへんかった。

クラスとか、名前も知らん後輩とか。女の子たちは大して俺のことも知らんと、意図も簡単に言っているように見えたから。


ありがたいとは思うけど、それでも俺のことを上部しか見てへんのやないかって思うと首を縦には振れんかった。



自分がモテない、とは言わん。俺がそんなん言うたらただの嫌味やし。

でもやっぱり、ほんまに好きになって欲しい子に好きになってもらわな意味がない。



俺にとってそういう存在は名字さんなんや。たとえその子が俺とは別の男を好きだとしても。



「…無理になんて言わへんよ。名字さんが好きなんは、」



俺の告白を聞いて黙ってしまった彼女に俺は断る隙を与える。抱き締めていた腕も解いて名字さんを見下ろす。

受け入れろなんて言うつもりない。謙也のことが好きなら、それでもええ。

俺は、やっぱり名字さんには男として見てもらいたいだけやから。


でもな、俺の口から名字さんが好きなんは謙也やろ、なんて言うのはつらい。

せやけど言わなあかん。そうでもしないと名字さんは断りづらいやろうから。



「…謙也やろ」



俺は無理矢理にでも笑みを添えて言う。

ちょっとくらいかっこつけさせてや。余裕のある男を演じさせてや。



「堪忍な、困るようなこ…」

「違いますよ」



俺の言葉に被せて遮ったのは名字さんの凛とした声。



「わたし、謙也くんのこと恋愛対象として見てません。謙也くんはお兄ちゃんみたいな存在なんです」



謙也くんも同じように考えてると思います、と言って微笑んだ。



「そう、なんや…」



なら名字さんの好きな男っちゅうのは俺の知らない奴なんやな。

女子校に通う名字さんやから、学校以外のどこかで会った男。




俺の、知らない…。



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