「うぅー」
「何、うるさいで」
「だってだってだってぇ!!白石さんからメール来なくなっちゃったんだもん」
最後に会った日から一度もメールが来てないんだよ。わたし何かしたかな。
あ、合コンなんて行く女の子は嫌だからかな。でも望んで行ったんじゃないって説明したし。むしろ言い訳って思われちゃったかな…。
「はるちゃん、どうしよう…」
「忙しいだけやない?部活入っとるんでしょ」
「そうだけど…」
はるちゃんは興味なさそうに雑誌を捲る。もうちょっとちゃんと考えてくれてもいいのに。
今までだって部活で忙しかっただろうけど毎日メールくれてた。それなのに急にぱったり来なくなっちゃったんだよ。
やっぱりわたしあの日に何かしたんだ。
「はぁ。そんなに悩むなら自分からメールしたらええやない」
「自分からって…。わたし何も用事ない…」
「最近どうですかーとかでええやん」
「よくないぃ!!」
本当に忙しいだけかもしれないし。そうだったら邪魔になっちゃうだけだもん。わたし白石さんの邪魔はしたくない。
テニスに真剣なことは謙也くんを見てたから想像できる。そうだよね。忙しいだけだよね。嫌われてなんてない…よね。
「会いたいなぁ…」
わたしの口からぽつりと本音が漏れた。
会いたい。本当はメールとか電話だけじゃなくて会いたいよ。
「名前、携帯貸してみ」
「へ?あ、うん」
わたしが何の疑いもなく携帯を渡すとはるちゃんは勝手に開いて弄り出す。それからニヤリと笑う。
え、はるちゃんなんか企んでる顔だ。
「ほら」
わたしに返って来た携帯。画面には通話中の文字。
しかも相手は…白石さん!?
「えぇ!?は、はるちゃん!?何してるの!?」
「だってうっといんやもん。電話すればええ話やろ。今なら四天宝寺も昼休みやろうし」
あのね、そうじゃない。そうじゃないよ、はるちゃん!!
四天宝寺もお昼休みだから電話していいとかじゃないと思う。だってわたしたちただの知り合いなんだよ。なのにお昼休みに電話なんて。しかも大した用事もないのに。
『もしもし、名字さん?』
あぁー繋がっちゃった。どうしよう。なんて言おう。それより迷惑だよね、絶対。嫌われちゃうよ。
『もしもし?』
「あ、はい!!もしもしです!!」
「ぶっ…あんたもしもしですってなんやの」
隣のはるちゃんが小声でツッコミを入れてくる。
わたしにももう何がなんだか。つまり余裕がありません。
『どないしたん?』
「あ…はい、そうですよね。えっと、その」
『名字さん、とりあえず落ち着き』
電話の向こうでクスクスと笑う白石さん。久しぶりに聞いた笑い声は以前と全く変わらない。
わたし、嫌われたわけじゃないのかな。やっぱり忙しかっただけなのかな。
「すいません。えっと…元気、ですか?」
うぅ…本当にそんなこと聞いちゃったよぅ。絶対変な子って思われちゃった。もう最悪…。
『うん?元気やけど。急にどないしたん?』
「いや、あの、ちょっと……ごめんなさい!!」
わたしは白石さんが次の言葉を発する前に携帯の電源ボタンを押した。そしてそのまま電源を切った。
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