次の日学校に言ったらはるちゃんに白石さんとのお出かけのことを聞かれた。根掘り葉掘りとはまさにこのことだと思う。
「良かったやん!!その友達、絶対名前に気あるで」
はるちゃんはそう言ったけれど、わたしにはやっぱりそうは思えない。だって白石さんは多分誰にだって優しいもん。
「名前ー」
「うん?りっちゃん。どうしたの」
「今日放課後暇?」
「うん。暇だよ」
「遊びに行かへん?」
「いいよ」
クラスメートの誘いに二つ返事をしたわたしは、後悔する事になる。
だってまさか…
「聞いてないよ!!」
「言うてないもん」
しらっと言うりっちゃんを口を尖らせて恨めしい目で見る。
誘われて来たのはカラオケで。他に一緒に来てるのはクラスメートの女の子二人。
カラオケの部屋に入ってわたしはびっくりした。だって男の子が四人座ってたから。
いくらわたしだってこれが何を意味するのかはわかるよ。
つまり、合コン、だよね。
花女は女子校だから合コンは珍しくない。
けれどわたしは少し苦手であまり参加しない。だから彼氏できないんだって言われたこともあるけど、どうしてもこの雰囲気は苦手なんだもん。
「ええやん、たまには。名前も彼氏欲しいやろ。出会いがなきゃできへんよ」
わかってる。でもわかってるけど、わたしは今は合コンなんて参加したくなかった。
出会いが欲しいとか思ってないもん。わたしは、白石さんが好きだから。他の男の子たちに出会いたいなんて全然思ってない。
「それに結構レベル高いやん。四天宝寺ってかっこええんはテニス部レギュラーだけやと思ってた」
「あいつらは別格やて。男の俺らでもかっこええと思うし」
なぁ、なんて相槌を打ち合う四天宝寺高校の男の子たち。
四天宝寺高校のテニス部…白石さんや謙也くんたちだ。やっぱりかっこいいんだよね。
「名前ちゃん」
「あ、はい?」
だいぶ盛り上がってきた頃、わたしの隣に座る男の子が声をかけてきた。確か島本君。
「合コンとか苦手?」
「はい、ちょっと」
「なら俺と抜けへん?俺も外出たいねん」
「いいですよ」
ただ純粋に外に出たいだけだと思った。だから頷いた。
島本君はわたしを引っ張って立ち上がらせて、みんなには適当に話をしてカラオケを出た。
「どこ行こか」
「…え?」
「え?やなくて。二人でデートやんか」
島本君の中ではそういう認識らしくて。でもわたし、デートしようなんて言われてないよ。
それにわかってたらついてこない。
「あ、あの、わたしそんなつもりなくて」
「うん、そう思てたけど。俺はそのつもりやから。行こ?」
勝手に自己完結されて腕を引っ張って歩きだす。
ど、どうしよう。わたし島本君のことあまりよく知らないのに。やっぱり今断らないと。
「離してください。わたし、行きません」
「離さへんし。ほら、行くで」
ぐいっと引っ張られたけれど、そこでぱっと手が離れた。
そして低い声が聞こえた。
「何しとんのや、島本」
島本君の前に立ってたのは白石さんだった。
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