お店でも見ながらぶらぶらしようってことになって二人で並んで歩く。
斜め上を見上げると白石さんの顔があって、わたしはこんなに素敵な人と歩いていていいのかなって思ってしまう。
でも白石さんはいろんなお店を見ながら話をしてくれる。おかげで少しだけ緊張が和らいだ。
「これ可愛い…」
「どれ?」
二人で小物屋さんに入って見ていたらすごく好みなストラップを見つけて足を止める。手に取って白石さんに見せると名字さんらしいなって笑った。
「買ったろうか」
「へ?いやいやいや、そんな!!ちょっと可愛いなって思っただけですから」
本当に欲しいってよりただ可愛いって思っただけ。それに映画も払ってもらっちゃったし。
そもそもわたしたちはただの知り合いだもん。何かを買ってもらうような関係じゃない。たとえわたしが白石さんのことが好きでも。
「ほんま反応おもろいな」
「なっ、わたしで遊んでますね!?」
「ははっ…堪忍」
ポンとわたしの頭に手を乗せる。
こうやって何気なく触れた所から熱がわたしを侵していく。白石さんの行動の一つ一つが心臓に悪いよ。
「あ、白石さん。これ見てください」
棚にかかっているストラップを指差した。テニスラケットと星がついているストラップ。
「ん?」
「謙也くんみたいです」
わたしはふふっと笑って手に取った。謙也くんはスピードスターなんだって言ってた。スピードは誰にも負けないって。
「あ、あぁ、せやな。スピードスターやもんな、あいつ」
白石さんは曖昧に笑ってわたしの手にあるストラップに目をやる。その瞳がちょっと元気がなさそうに光るから気になった。
「どうかしました?」
「え?何もないで」
またもとの笑顔に戻ったからわたしの勘違いだったのかな。
それからいくつもお店を見てまわったけど、白石さんはいたって普通だった。終始笑顔で、時々わたしをからかって。
楽しい時間はあっという間だ。
「送っていただいてありがとうございます」
白石さんはわたしを家まで送ってくれて、わたしはぺこりと頭を下げた。
「いやいや、俺が送りたかったんやし」
「でも遠回りですよね」
「そんなんええんや。名字さんは気にせんで」
それからまたわたしの頭を撫でて、小さな声で言葉を残して去って行った。その言葉にわたしは真っ赤になって固まってしまう。
『名字さん、めっちゃかわええし、今日は楽しかったで。また誘うわ』
あんなに素敵な人にそんなことを言われたら、どうにかなってしまうよ。ましてやわたしは白石さんのことが好きなんだから。
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