映画を見終わった後昼食をとることになって近くのカフェに入った。

白石さんはこのカフェに来たことがあったらしく、わたしは白石さんのオススメを頼んだ。



「映画おもろかったな」

「はい!!とっても。見に来て良かったです」



映画は実際面白かった。

最初こそ隣に座る白石との距離が近くてドキドキしてたけど、映画に夢中になったわたしはそんなことちっとも気にならなくなっていた。わたしって現金だなぁ。



「この後どないする?」

「あ、そうですね…白石さんはどうしたいですか?」



行きたいとこを聞かれても思い浮かばなかったわたしは白石さんに聞き返す。

白石さんはせやなあ、って頬杖をついて考えて、それから困ったように眉を寄せた。



「特にないなぁ。全然考えてへんかったわ」



わたしを見て堪忍と謝る。白石さんが謝る必要なんて全くないのに。わたしだって思い浮かばないんだし。

でも白石さんからそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。



「意外、ですね」

「え?」

「彼女さんとかをきちんとエスコートしそうなのに」



彼女、きっといるよね。きっとこんなにかっこよくて素敵な白石さんには彼女がいる筈だ。

白石さんは高校生には見えなくて、ものすごい大人っぽい。映画のお金とかも出してくれちゃったし、多分女の子に慣れてる。
だからデートコースとか女の子が好きそうなものとかもわかってそう。



ちょっとだけへこむな。白石さんにとってわたしはただの親友の幼なじみだし。年下だし。



「それに謙也くんが白石さんは完璧主義者だって言ってたから」



以前、と言ってもそんなに前じゃないけど、謙也くんに白石さんがどんな人か聞いたことがある。

謙也くんにとって白石さんは多分親友で、仲間で、信頼できる存在。謙也くんの口から出てくる白石さんの話に文句なんて一つもなかった。

ただ、良くも悪くも完璧主義過ぎるって言ってた。



「そんなイメージがあったんで意外だなって」

「…」



白石さんは複雑そうな顔をして頬杖をつくのを止めた。それからちょっとだけ悲しそうに目を細めた。わたし何か嫌なこと言っちゃったかな。



「…完璧やない俺は嫌?」

「あ、え、全然!!完璧である必要なんてないですから」



わたしは首をブンブンと横に振る。そんなわたしを見て白石さんはほっとしたように笑顔になった。



「そっか」



わたしの頭に白石さんの手が伸びてきてポンポンと撫でた。わたしは顔に熱が集まっていくのを感じた。

だっていきなり反則だもん。急にそんなことされたら心の準備ができてないじゃない。



「あ、誤解しとるようやけど俺彼女おらんから。ちゅーか、彼女おったら他の女の子と出かけへんやろ」

「そそそーなんですか。か、かっこいいし女の子に慣れてるみたいだからいるのかなって勝手に思ってました」

「慣れとんのは姉と妹が居るからかもな」



慌ててるせいかドキドキしてるせいかわたしはどもってしまって。白石さんはそんなわたしを見てクスクスと笑った。



「俺、かっこええん?」



ミルクティーブラウンの髪の毛を少し揺らして首を傾げる。わたしの顔は確実に赤みを増したと思う。


その仕草だってかっこいいって気づいてないのかな。どう見たって白石さんはかっこいいのに。

白石さんにしても謙也くんにしてもイケメンは無自覚すぎるよ。



「も、もちろん!!」

「ふはっ、さっきからどもりすぎやって」



白石さんは吹き出して笑った。わたしの熱がまた上がる。





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