白石さんと別れて家に入ってからもわたしの心臓はずっとドキドキが収まらなかった。

白石さんの触れた頭にまだ感覚が残ってるような、そんな気分。


謙也くんに報告メールを送って、携帯を閉じた。ベッドの上に寝転んで緩む頬に手を当てる。



「喜んでくれてた…よね」



嬉しいって言ってたもん。けど中身見てがっかりしたらどうしよう。だって女の子らしいプレゼントじゃないし。

でも逆に付き合ってもない女の子から大層な物もらってもウザいよね。あれくらいがちょうどいい、はず…。



「うわゎっ」



突然鳴りだした携帯に吃驚する。着信音がわたしの狭い部屋で鳴る。


電話だ。早くとらなきゃ。そう思って携帯を見るとディスプレイには白石蔵ノ介の文字。


白石さんだ。もしかしてこんなプレゼントいらんわ、みたいな文句かな。どうしようどうしよう。やっぱり迷惑だったかもしれない。



「も、もしもし」



出ないわけにもいかないから、一つだけ深呼吸をして電話に出る。今のわたしは思わずベッドの上で正座してしまう程緊張している。



『もしもし名字さん?』



白石さんの声はわたしの緊張を助長する。応えた声が思わずうわずってしまった。恥ずかしい。



『夜遅くに堪忍な。まだ起きとった?』

「はい。もう少ししたら寝ようかなって思ってたとこです」



正直多分寝れない。ドキドキしてるし、白石さんを思い出すだけで顔がにやけてしまう。



『なら良かった。プレゼント、ほんまおおきに』

「え?」

『めっちゃ嬉しいわ』

「あんなもので良かったんですか…?」



だって普通にタオルとただの絆創膏だし。わたしが男だったら全然欲しくない。気遣ってくれてるのかな。



『?せやかて名字さんが選んでくれたもんやろ』



確かにそう。タオルは文句を言う謙也くんを待たせながらすごく迷って選んだもの。

どんな色が白石さんに合うかなっていろんなお店を回った。最初は乗り気じゃなかったのにいつの間にか楽しんでたくらい。



『俺のために選んでくれたんやったらどんなもんでも嬉しいわ。それによう怪我するって言うたん覚えとったんやろ?』



何でそんなこと言ってくれるの。優し過ぎるよ。あんな物でそんなこと言ってくれるなんて。


謙也くんが白石さんがモテるって言ってたのわかるや。

顔は勿論かっこいいけど、性格もすごくいい。きっと白石さんのことを好きな女の子たくさんいるよね。



「自主練の時怪我するって言ってたから…役に立つかなって」

『めっちゃ役立つで。早速明日から使うわ』

「で、でも、怪我には気をつけてください!!しないほうが良いんですし」

『はは、そらそうやな』



それから白石さんはあまり長電話するのも良くないと言って、もう一度お礼を言ってからおやすみと電話を切った。



「おやすみ…だって…」



ベッドにごろんと横になる。






火照る頬。



熱い躯。



ドキドキする心臓。






ダメだ。わたし、完全に白石さんを好きになってしまってる。




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