結局、何を買ったらいいかなんてわからなくて無難にタオルを買った。部活を頑張っているだろう白石さんに少しでも役に立てば、と思って。


それともう一つ。それは何の変哲もない普通の絆創膏。

メールで一度、自主練してるとよく怪我をするって言ってたことがあるから。



家に帰ってから、ふたつ一緒にラッピングされたプレゼントを机の上に置いてにらめっこ。


なんだかあまり女の子らしくないプレゼントになってしまったような気がする。謙也くんや部活の人みたいに笑いに走ってはいないけど、色気も可愛げもない。



それに解決していない問題がある。これをどうやって渡すか、だ。

明後日は普通に平日で、きっと白石さんは部活の筈だ。部活で疲れてるのに呼び出すのは気がひける。そうかと言って渡しに行くのも迷惑だろうし。



「謙也くんに渡してもらう…のも違うよね」



受け取ってもらえなかったら、謙也くんが困っちゃう。一方的に押し付けるみたいだしよくない。



「謙也くんに相談してみようかな」



携帯を取り出してメール画面を開く。宛先を謙也くんに指定して、本文を打ち始めた。



送信してから少ししてメールが来た。当然謙也くんだと思って心の準備もなしにメールボックスを開くと白石さんだった。



「『今日、謙也と一緒に居らんかった?』って、何で知ってるんだろう」



びっくりしてつい口に出して読んでしまった。謙也くんと買い物してるの見られたのかな。それならプレゼント選んでるのバレちゃったかも。



「えーっと、きっと見間違いですよ。っと」



無難な絵文字を入れてはぐらかしてみる。プレゼントを用意してるなんて知られたら気を遣わせてしまうかもしれない。渡せなかったら渡せなかったでいいんだから、白石さんに余計な気を遣わせたくない。



意外とすぐに返信が来て、その後メールは来なくなった。疲れて寝ちゃったかな、なんて思って謙也くんのメールを待つ。



数分して謙也くんからメールが来て、呼び出せばええやん、なんて書いてある。だからそれがダメなんだってば。



『なら、俺らが駅に着く時間を連絡したるわ』



謙也くんは部活が終わったら連絡すると言ってくれた。隣の駅の高校に通うわけだから連絡をもらってから学校を出れば間に合う。


わたしは結局そうしてもらうように頼んだ。

















迷って迷った末に名字さんにメールをした。もう11時回っとるし迷惑かもって思ったけどやっぱり確認したい。あ、白石蔵ノ介や。何を迷ってたかっちゅうと、今日謙也と一緒に居ったかを聞きたくて。


部活も自主練やし、少しだけ自主練してから寄り道をして帰ったんや。

謙也は自主練もそこそこに帰ってまうし、ユウジと小春は漫才のネタを合わせるんやとか。千歳はフラフラしとって捕まらん、金ちゃんと財前はまだ打ってく言うし。銀さんと小石川は用事やって。


たまには一人でふらつくんもありかと思って、テニスショップやCDショップに寄り道をする。逆ナンされんように注意を払いながらショッピングモールをうろうろしとったら、見慣れた後ろ姿を見つけた。


金髪でラケットバッグを持ったその後ろ姿は謙也で、女の子の手を引いとった。

最初は彼女かと思ったけど、謙也には四天宝寺に好きな女の子がおる。せやから違う。その女の子は花女の制服やし。

そういえば確か名字さんも花女や。確信はないけど、あれは名字さんな気がする。謙也があんな楽しそうな顔しとるんやしな。



モヤッとした。何やこの煮え切らんような気持ちは。別に名字さんが謙也と買い物しとってもええ筈やのに。



本人に聞いてみよう思ってメールをしようと思ったけど、もし名字さんやったとしても二人は幼なじみやから、一緒に買い物なんてきっと普通のことなんや。そんなの特別な関係があるわけでもない男に聞かれても困るやろなぁ。なんて悶々と考えとったせいでこんな時間になってもうた。

でもやっぱり気になるからメールをした。



『気のせいですよ』



意外とすぐに来た返信を見るとその一文だけ。なんやかわされた気ぃするわ。名字さん以外には考えられへんのに、隠す意味は何なんやろう。



もしかしてほんまは謙也のことが、好き…とか。ありえへん話でもないよな。



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