電車に乗ってショッピングモールに着いてから謙也くんに何が目的なのか聞いてみた。

きっと新しい服とかベルトが欲しいんだろうな、と思ってた。でも意外な返事が返ってきた。



「明後日誕生日なんや」

「え、謙也くんは3月17日だよね?」



今日は4月12日。幼なじみの誕生日を忘れる筈ない。毎年お祝いしてるし、つい先月お祝いしたばっかりだ。



「俺やないわ。白石や、白石」

「白石さん…?」

「せや。だから何やおもろいもん買うたろ思ってん」



何を買うか決めてないからわたしに付き合ってほしい、のだとか。でもわたしが付き合ったところで面白いものなんか見つからなそうだけどな。


というか男の子たちは誕生日さえも笑いのネタにしてしまうのものなんだ。



「あ!!名前も何か買うたら?」

「へ?」



謙也くんの予想外な提案に思わず間の抜けた声を出してしまう。さも妙案を思いついたように顔を輝かせる。



「白石のやつ、名前からもらったら絶対喜ぶで」

「そう、かな?わたしあんまり白石さんのこと知らないし。よく知らない女の子からもらってもきっと嬉しくないよ」



わたしたちはただ数日前からちょっとメールをするようになっただけ。それなのに誕生日プレゼントなんてもらっても絶対困るよ。迷惑になっちゃう。

それに謙也くん以外の男の子とあまり関わらないわたしは白石さんに何をあげたらいいかなんてわからない。もっと言うと、学校が違うから渡す方法もない。



「そんなことないで!!なぁ、買おうや?」



うーん、といつまでもはっきりしないわたしの手を引いて謙也くんはどんどんお店を回っていく。


お店を回るうちにいつの間にかわたしもその気になっていて真剣にプレゼント選びをしていた。

あれはどうだ、これはどうだって話しているのは楽しくて。白石さんを思い浮かべながらいろんなものを見定めていく。



「謙也くん、何買うか決めた?」

「おん、決めたで」



たくさんお店を回ってから聞いてみたら謙也くんは知らないのうちに決めていたらしい。


謙也くんの目当てのものは本屋さんにあるというから一緒に本屋さんに行く。本屋さんってことは当然本を買うんだろうけど。

白石さんはもしかして読書家なのかな。



「そんなのでいいの?」

「割と真面目やろ」



という手の中にある本は読書家に渡すものではなさそうなタイトルだ。



「“イケメンに笑いを!!”って全然真面目じゃないよ」

「そうか?俺的にはめっちゃ真面目やと思うねんけどな」



部活の人たちはもっとすごい物を渡しているらしい。その中ではこれは全然真面目な部類に入るのだとか。



「でも何でこんな本なの?」

「白石、かっこええからようスベるねん」



謙也くんは笑いながら言うけど、白石さんがボケたりする姿はあまり想像できない。というか冗談とかさえ言いそうにない。



「やから四天宝寺の部長としてもっと笑いを研究してもらうかっちゅー話や」

「白石さんって部長さんなんだね」



白石さんが謙也くんと同じテニス部なのは、初めてあった時にラケットバッグを持ってたから知ってる。それにメールでもちょくちょく部活の話をしてる。

でも白石さんから自分が部長だなんてことは一度も聞いたことがなかった。



「中学ん時からな。努力もしてて周りにも目を配れる、ほんますごい奴やで」



それは何となくわかる気がする。メールしてて周りの話をよくしてるから。きっと白石さんにとってはみんなは大切な仲間で、みんなも白石さんをそう思ってるんだよね。



また、新しく白石さんのことを知れたような感じがした。




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