走って行った部長の後を追ってあたしも教室を出た。帰宅部のあたしが追い付ける筈もなくて、部長はどんどん遠ざかる。


ついに見えなくなってあたしは足を止めた。ぜぇぜぇとする呼吸を整えてまた走り出した。



すごく、すごく嫌な予感がする。



最近の財前の変化やさっきの部長の反応…。絶対に何か理由がある筈だ。


行く宛もなく走っていたあたしはとりあえずテニス部の部室に行った。



「名前ちゃん…」



あたしが息が上がった状態で部室に着くと小春先輩だけがいた。でも小春先輩はいつものような元気はない。どこか不安げで、眉をハの字にしていた。



「こはっ…こはる、せんぱい!!部長は…?」

「蔵リンたちは光君を探しとる」



やっぱり財前に何かあったんだ。部長のあの焦り方とか今の状況は明らかにおかしい。

あの女の先輩が財前にとってどんな存在かなんてあたしにはわからないけど。少なくとも招かれざる相手であることはわかる。



「あたしも探します」



それだけ言ってまた校舎内を走る。


どこにいるかは想像すらできない。手当たり次第に空き教室を見てみるけど全部はずれ。


保健室に来たときに部長に会った。



「部長、財前は!?」



部長もあたしと同じように息を切らしながら首を横に振る。



「あまり使われへん場所ってどこや…」



あまり使われない場所なんて学校には数えきれないほどあるんじゃないか。もうすぐ休み時間も終わる。そうすれば使われない場所はもっと増える。



「名字さんはとりあえず教室戻り。もう授業始まるし」



無理矢理作った笑顔で言われると余計に不安が増す。授業なんかより財前の方が気になる。



「あたしも探させてください」

「あかん。もし名字さんが財前を見つけたら逆に危険やから、おとなしゅう授業うけとって。見つかったら連絡するから」



安心させるようにあたしの頭をぽんと叩いて走って行った。

あたしは声を掛けることもできず部長を見送り、言われた通り教室で授業を受ける。とは言っても財前が気になって寝ることもできやしない。


あたしが見つけたら危険ってどういうことなの…。それはつまり財前は今危ない目にあってるってことだ。


あの女の先輩はそんなに危険人物なのか。




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