ゲームに夢中になってたらコンコンと机を叩かれた。ゲームをポーズ画面にして、イヤホンを片耳だけ外す。あたしの邪魔をした犯人を睨み上げる。
あ、クラスメートのピアスだ。
「何で自分がここにおんのや」
何でってそんなのこいつに聞かれる筋合いはない。あたしがどこにいて何をしてようとあたしの勝手だ。
「鍵かかってたやろ」
あぁ、そういうことか。
ピアスはポケットから出した鍵をあたしの前に置く。
「鍵なんてかかってなかったけど」
ピアスは少し考えて納得したように頷いた。
「昨日かけ忘れたんやな」
そう言ってピアスはお決まりの席なのか、窓に一番近い一番後ろの席に座った。首にかけてたヘッドフォンを装着して目を瞑る。
よくみたらイケメンだ。長い睫毛に整った顔立ち。黒髪に五色のピアスがよく映える。まぁ、だから何だって話なんだけど。あたしには関係ないし。
「何見てんねん」
不機嫌そうに目を開けてあたしを見た。バッチリ目が合って何となく悟った。
もしかしたらこのピアスもあたしと同じかもしれない。人を信じられなくなったあたしと。
「いや、あたしここにいてもいいのかなーと」
「勝手に。俺には関係ないわ」
それだけ言ってまた目を瞑る。あたしもゲームを再開する。
それからどれだけ経っただろう。お腹が減ってきたから多分昼くらいだ。ピアスが立ち上がってあたしの目の前に鍵を置く。
「出る時鍵閉めて俺に返しや」
ピアスは視聴覚室を出て行った。
あたしはまた一人でゲームを続ける。お腹が減ってきて、なかなかクリアできないことに苛立ちを感じつつポケットを弄る。
お気に入りのミルクキャンデーを出して口に放り込んだ。甘い味が口内に広がる。
それによって空腹が紛れて、放課後までそのまま視聴覚室にいた。
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